昨年、9月の作画インより10ヶ月。
宮崎吾朗監督以下、この映画に関わって下さった方々と共に、ついにこの日を迎えることができました。
この場で、多くは語りますまい。
試写後の、スタッフの晴れやかな顔が、この映画の出来ばえを映し出していた……とだけ、記しておきましょう。
スタッフ一人ひとりと握り交わした手のぬくもりが、今もこの手に残っています。
皆さん、本当に、ありがとうございました!
監督・宮崎吾朗が作詞した「ゲド戦記」のテーマ曲「時の歌」に、こんなフレーズがあります。
生まれ 消えてゆく はかない
命たちよ
終わりがあり
始まりがあるよ
忘れないで
映画制作という長い旅を終えた僕たちは、この映画が始まった時を思い、今、その終わりをかみ締めています。
でも、映画の完成という終わりは、新たな旅の始まりでもあります。
それは、この映画が全国の劇場で、皆さんと素敵な出会いを果たすこと。
映画「ゲド戦記」の公開日は、1ヵ月後の7月29日(土)。
この夏、皆さんと全国の劇場でお会いするのを、楽しみにしています。
昨年12月13日(火)より、制作現場からお届けしてきました「ゲド戦記」制作日誌は、本日の映画完成をもちまして、最終回となります。
長い間、ご愛読くださり、本当にありがとうございました。
■手前左から
制作/伊藤郷平・仲澤慎太郎
■奥手左から
制作/齋藤純也 制作担当/渡邊宏行 制作/石井朋彦
※シャイな制作デスク/望月雄一郎は写真撮影辞退(笑)
「制作日誌」及び「監督日誌」「スタジオジブリ公式サイト」は、ラファの高井真一さんにデザイン・運営して頂いています。
高井さんの、インターネットに関する深い知識と技術を無くして、この分野にうとい(笑)スタジオジブリが、こうしてサイトを運営する事はかなわなかったことでしょう。
本サイトのサーバーを置かせて頂いているフォアキャスト・コミュニケーションズのスタッフの皆さんにも、御礼申し上げます。
特に、携帯サイトの運営を担当して下さった堂園佑子さんには、迅速な更新に加え、毎日貴重なご意見とご感想を頂きました。堂園さんのご助言無くして、無謀なる「毎日更新」はあり得ませんでした。
そして、制作現場に息づく様々なネタを提供してくれたスタッフと、猫のウシコたちにも、感謝を。
ここに、お一人おひとりのお名前をあげる事は出来ませんが、多くの方々のご協力を経て、スタジオジブリのサイトは運営されています。
「スタジオジブリ公式サイト」「監督日誌」は、今後も鋭意連載いたします。引き続き、ジブリの最新情報から、全国各地をキャンペーンで飛び回るゴロウ監督と、鈴木プロデューサーの「生の声」にご期待下さい。
最後に、「制作日誌」を訪れて下さった全ての方々に、心より御礼申し上げます。
ジトジト雨から一転、今日の東小金井は、夏を思わせる晴天です。
いよいよ明日、完成した映画をスタッフ全員で最終的に確認する「初号試写」を迎えます。
『ジブリ3階・中庭に咲くアジサイ』
さて。
今回が、「ゲド戦記」制作日誌・コラムの最終回。
昨年12月から半年間にわたって、映画「ゲド戦記」がどのように企画され、現場のスタッフがどうやって映像化してきたかを、紹介してきました。
長文であるにも関わらず、長い期間、お付き合い頂き、本当にありがとうございました。書いている僕が驚くほど細部まで読み込んで下さり、沢山の質問や感想のメールを頂きました。全てに目を通し、連載の参考にさせて頂いています。
さあ、張り切ってお開き、と致しましょう(笑)
この間述べてきた様に、アニメーションの画面は、キャラクターと背景のふたつに分けられます。
アニメーターが描いたレイアウトを監督と作画演出・作画監督がチェックした後……、
「キャラクター」 原画→動画→色彩設計・色指定・仕上
「背景美術」
の大きく2工程に分かれて、作業が進められます。
このふたつを重ね合わせ、最終的に、劇場で皆さんにお見せする状態にもってゆくのが、今回紹介する、「撮影(映像演出)」のお仕事です。
『ゲド戦記・制作フロー(クリックすると拡大)』
「撮影」とは、実写映画で言えば、現場でカメラを回すことですが、アニメーションの場合は、少し意味合いが異なります。
かつては、背景の上に、セルという透明なシートの上に転写・着彩されたキャラクターを載せ、上からフィルムカメラで撮影していたことから、いまだに「撮影」という言葉が使われていますが、現場がデジタル化した今、映像表現の幅は格段に広がり、撮影部が映像に対して担う役割もより大きくなりました。最近は、撮影という呼び方に代わって、「コンポジット(合成)」や「ビジュアルエフェクト(映像効果)」等の呼称が使われることも多くなりました。
スタジオジブリでは、撮影監督の奥井さんが、最終的な完成映像に対する責任と、様々な映像処理を担っている為、「映像演出」というクレジット表記をしています。
前回と前々回で紹介した、背景美術と仕上済みのキャラクターは、撮影部に集められ、重ねられます(合成)。
『モニター上で重ねられた背景とキャラクター』
画面の後ろに、表のような、格子状の表示が見えますよね。
これは、タイムシートといって、キャラクターと背景の動きを指定した情報です。1カットごとの、キャラクターや、流れる雲や草などの背景の動きは、タイムシートに入力され、コンピューター上で計算がかけられます。この辺はちょっと複雑になりますので、省略しましょう。
合成された少年の映像をよ~く観察してみてください。
そして、以下の完成画面を見てみましょう。
『完成画面』
何か違いませんか……?
例えば、少年の顔。
完成画面では、頬に汚れがついていますが、単純に合成した画面にはまだ、存在しません。
これは、特殊効果と言って、完成した画面に、特殊効果担当の糸川さんが加えている処理。
鉛筆の線や、仕上の塗り分けでは表現できない微妙なタッチを、1枚1枚、描き加えているのです。
加えて、壁に落ちている少年の影。
合成画面では真っ黒ですが、完成画面では半透明に透けています。これも、撮影部で処理を加えています。
そしてもうひとつ、何か違うことに気づきませんか……?
拡大して見てみましょう。
『左が単純合成・右が完成画面』
少年の肌に注目してみて下さい、左の単純合成は、ノッペリと単色ですが、右の完成画面では、微妙な細かい粒子が、画面全体にかかっていることが確認できると思います。
デジタル上で塗った色は、全てが均一で、ベターっとしてしまいます。
そこで、実際にフィルムに焼かれた状態に近いよう、僕らが自然に見て目に馴染むように、画面全体にアナログ風の、均一ではないフィルターをかけているのです。
太陽の光や、多重に流れる雲の動き、雑踏にゆらぐ人いきれ……1カット1カット、撮影部の駆使する様々な効果が加えられ、映画の画面の質を、一段も二段も、引き上げているのです。
尚、今回のコラムでは紹介できませんでしたが、CG部も、通常のセルアニメーションでは表現できない、様々な画面効果を担っています。
予告編でも使われている、鳥が塔に向かって急速に降下するカット。これは一見セルアニメーションの画面に見えますが、手で描いた画だけでは表現できません。
このカットは、CG部が3D(立体)の建物をコンピューター上で構築し、背景素材を貼り合わせて作りあげているのです。
ジブリCG部のモットーは、「CGには見えないCGを」。
予告編には、他にもCGカットがいくつか使われていますので、どのカットがCGカットか、探してみてください。
さあ、こうした作業を、1236カット分経て、映画「ゲド戦記」の映像は完成しました。
明日はいよいよ、完成した映画を、ゴロウ監督以下、スタッフ全員で試写する「初号試写」。
今日は、多くを語りますまい。
今はただ、座して待つのみ……でアリマス。
制作休暇を終えたスタッフも、リフレッシュして戻ってきました。スタジオは少し活気を取り戻しながらも、初号試写前の、何とも言えない緊張感に包まれています。
運命の日まで、あとわずか……。
「ゲド戦記」の制作工程を紹介しながら、アニメーションの作り方を解説している「ゲド戦記はこうして生まれる」。いよいよ、アニメーションの映像制作の最終工程「色彩設計・色指定・仕上(しあげ)」と「撮影」を残すのみとなりました。
これまで、アニメーションのキャラクターを作画し、動かす「原画」と「動画」。画面の背景、世界観を画用紙に描き出す、「背景美術」について書いてきました。
このふたつは、コンピューターに取り込まれ、重ねられます。
『背景に動画の線画が重ねられた状態』
この、線画のキャラクターに塗る色を、作品全体を通して設計するお仕事が「色彩設計」。
「色彩設計」を元に、カットごとのキャラクターに塗るべき色を指定してゆくお仕事が「色指定」。
「色指定」を元に、1枚1枚、色を塗ってゆくお仕事を「仕上(しあげ)=デジタルペイント」と言います。
『ゲド戦記・制作フロー(クリックすると拡大)』
●「色彩設計」というお仕事
この間の制作日誌でも、何度か紹介してきましたが、アニメーションのキャラクターは文字通り、線で描かれた平面な絵です。
先ほどの、背景の上に載せられた線画を見直してみて下さい。
顔、目、鼻、口、髪の毛から、少年の首に巻かれた「枷(かせ)」に至るまでが、鉛筆の線で描き分けられています。
当然、この状態では、完成とは言えません。
完成画面をよ~く観察してみて下さい。
『完成画面』
髪の毛や肌、少年の服、キャラクターを構成する全てに色が塗られています。
この、画面に登場するキャラクターの色を、ひとつひとつ設計するお仕事が、「色彩設計」。
「ゲド戦記」では、高畑勲・宮崎駿両監督が「戦友」と呼び、絶大な信頼を寄せる、保田道世さんが色彩設計を担当して下さっています。
背景美術が、筆とポスターカラーを使って、森羅万象を表現するお仕事なら、色彩設計は、線画で描き分けられたキャラクター(だけではなく、草木や扉など、動くモノは全て色彩設計が色を指定します)の、一部分一部分に色を指定し、鉛筆で描かれた平面の絵に、命を与えるお仕事。
その奥はあまりに深く、この場で全てを解説することは難しいのですが、ひとつ解りやすい例を挙げてみましょう。
皆さん、人間の肌は「肌色」だと思いこんではいませんか?
先ほど紹介した完成画面の肌色を見てみてください。肌色と言うよりは、ちょっと青みがかった、グレーっぽい(?)色になっていますよね。
このページから観ることの出来る予告編を、キャラクターの肌の色に注目してご覧になってみて下さい。カットによって、全てキャラクターの肌の色が違うことに、驚かれると思います。
朝昼晩。夕陽に照らされたり、蛍光灯の下で見る僕らの肌の色が全て違って見えるように、アニメーションにおいても、画面の時間や天候、状況によって、キャラクターの肌の色は、無限に存在するのです。
色彩設計のお仕事は、そのカットの時間帯から環境、キャラクターの着ている服の素材から質感に至るまで……を色によって表現し、時にはキャラクターの感情までを表現する、実に奥深いお仕事なのです。
色彩設計は、このような画面上で行います。
背景の上に線画を載せ、鉛筆で描き分けられた範囲の色を設計してゆきます。
画面の下に、四角く、「パレット」と呼ばれる色の帯が並んでいますね。これらが、この画面で使われている色を示します。この画面では小さくて見えませんが、黒目の中だけでも、瞳孔と地の色、ハイライトという、3種類の色が使われています。
このカットだけで、30色くらいの色が使われているそうなのですが……僕は数えられませんでした(笑)
●色指定・仕上のお仕事
こうして、保田さんが設計したキャラクターの色を、色指定スタッフが、カットごとに指定してゆき、仕上担当スタッフは、色指定スタッフが指定した色を元に、1枚1枚、色を塗ってゆきます。
『仕上スタッフが色を塗りおえた画面』
「ゲド戦記」の動画枚数は、約76000枚。
その1枚1枚全てに、色を塗ってゆくのです。
想像しただけでも気が遠くなる作業。仕上部のスタッフたちは、朝から夜まで、食事とおやつ休憩をのぞいては、ズーッとコンピュータに向かい、この膨大な仕事を、見事に成し遂げました。
『仕上部で色指定チェック中のゴロウ監督』
さあ、こうして、キャラクターと背景が完成しました。
次回は、映像制作の最終段階、「撮影」のお仕事を紹介し、最終回としたいと思います。
先日のこと。
ジブリ2階・作画部から見える木の上で、鳥が「ギャーギャー」と尋常ではない声で鳴いている……どうやら、屋上付近の木の上に、蛇がいるらしい。
蛇は、木の上にある鳥の巣を狙っていたようなのです。
『Tさんが激写した、体長1メートルほどの蛇』
急いでTさんたちが階段を上がってゆくと、猫のシャチが、何食わぬ顔で、3階から降りてきました。駆けつけてみると、蛇は鳥の巣を狙うことを断念したのか、木の下の方へと降りていった後……。
Tさんは推理します。
「もしかしてシャチは、鳥の巣を狙う蛇を威嚇する為に、屋上に行ったのでは?」
この推理が真実なら、シャチの行動範囲は、ジブリ3階だけではなく、屋上にまで達していた……という事になります。
さて、真相は如何に?
閑話休題(それはさておき)。
今回は、アニメーションの背景美術について、書いてみたいと思います。
『ゲド戦記・制作フロー(クリックすると拡大)』
この間のコラムで、アニメーションは、キャラクターと背景を、頭の中でふたつに分けて考えると解りやすい、と書いてきました。
『キャラクターの後ろが、背景です』
レイアウトを元に、アニメーターがキャラクターを描き(動かし)、背景美術スタッフが、文字通り背景を描きます。
背景とは、ひと言で言ってしまえば、「画用紙に描かれた絵」です。
大空を流れる雲や、流れてゆく風景等をコンピューター動かしたりすることはあるものの、原則として、画用紙に描かれた背景は止まっています。
でも、実際にアニメーションを観ているときのことを思い出してみてください。
風にそよぐ草原や、建物の重厚感、抜けるような空……。
まるでそこに世界があるかのように、僕らは映画の世界を感じています。
紙に描かれた絵で、映画の世界に息づく森羅万象を表現するのが、背景美術スタッフの仕事。映画の世界観は、背景美術によって決定される、と言っても過言ではありません。
●背景美術の道具
アニメーションの背景美術に使われる道具は、特別なものではありません。
TMKポスター紙という、いわゆる僕らが、小学校や中学校で使った、画用紙に、「画筆」という、日本画用の筆を使い、ポスターカラーで描きます。
さぞや専門的な道具を使っているのでは……? と想像される方も多いと思いますが、安価で手に入り、なおかつ扱いやすい道具として、アニメーションの世界では、ほぼ例外なく、この3点セットが使われています。(最近は、パソコン上で背景を描く現場も増えてきましたが……)
『美術スタッフの道具一式が並べたれた机』
●背景美術の基本
背景美術で描かれる絵の基本となるのは、「レイアウト」です。
以前のコラムで、レイアウトを元に、アニメーターがキャラクターを、背景を背景美術スタッフが描く、と書きました。
『これが完成画面』
『これが、アニメーターの描いたレイアウトです』
このレイアウトの背景部分の画を、画用紙に転写します。画用紙とレイアウトの間にカーボン紙を挟み、上からなぞって線を写してゆく。
本当は、このカットの背景が、実際にどのようにして描かれてゆくのかを、順を追って紹介したいのですが、原画や動画と違い、背景は1枚の画を、徐々に塗り重ねて完成させてゆくため、映画が完成した今、途中段階は残っていません。写真は作業風景になってしまいますが、ご容赦下さい。
画用紙に線を転写したら、「地塗り」という作業を行います。
地塗りとは、アニメーションの背景描画技術にとって、最も大事な作業。
ひと言で地塗りと言っても、様々な方法があるのですが、画用紙に、画全体の構成、色味、物の配置などを、ザックリと塗ってゆく作業を言います。
空はどのようなグラデーションを帯びていて、その下に広がる草原には、どんな草が生えているのか……。地塗りの段階で、完成した背景の良し悪しが決定される、とスタッフは言います。
『地塗り作業中のスタッフ』
地塗りする画用紙は、水で濡らしてから描くことが多いため、紙が乾いてしまう、30分から1時間くらいの間が勝負!
地塗り中のスタッフには、僕らも声をかけないように注意します。もちろん、電話が鳴っても取りつげません(笑)
地塗りが終わったら、ゴロウ監督と、美術監督の武重さんがチェックをします。
画面の色味から空気感、物の配置に至るまで、ざっくりと描かれた「地塗り」段階で、画面全体のイメージを相談し、固めてゆくのです。
「地塗り」が終わったら、仕上げ作業。細い筆を使って、細部を描き込んでゆきます。
『建物の細部を描き込んでゆく美術監督の武重さん』
こうした作業を経て、先ほどのレイアウトから、背景が完成しました。
『完成背景』
暗い室内の木の質感から、留め金の重厚さまでが、ポスターカラーによって描き分けられています。
『完成した背景を前に打ち合わせするゴロウ監督と武重さん』
ぜひ、このページから観ることのできる予告編を今一度見返し、「ゲド戦記」の背景美術に注目してみてください。ジブリ背景美術スタッフが生み出した、物語の舞台「アースシー」の空気感を、映画公開前に、感じて頂ければ幸いです。
こうして完成した背景は、コンピューターに取り込まれ、前回紹介した動画の線が載せられます。
次回は、線画キャラクターに色を指定し、一枚一枚塗ってゆく「色彩設計・仕上(しあげ)」作業について、書いてみたいと思います。
現在は、完成した音を、フィルムに収録(焼く)する為の作業中。
ゴロウ監督の言葉通り、もうこれ以上、映画に手を入れる事は出来ません。あとは、完成した映像と音楽を、皆さんに劇場で観て頂く為の、最終チェック(「初号試写」)を待つのみです。
さて。
長きにわたった、ダビング作業中のひとコマ。
音響作業は、朝から晩まで(時には明け方まで)続きました。
ゴロウ監督、鈴木プロデューサーの仕事は、音響スタッフが仕込む台詞・効果音・音楽をチェックすること。当然、待ち時間が多く、ついつい、テーブルのお菓子に手がのびてしまいます。
そんな鈴木プロデューサーの大好物は、あま~いチョコレート。平均睡眠時間4~5時間。お酒を飲まない鈴木プロデューサーにとって、「糖分」は、重要な気付け薬なのです。雑誌の編集者時代には、キャラメルの箱が常に机に積んであったとか。
『鈴木プロデューサーの為に用意されたチョコレート』
鈴木プロデューサーは否定していますが、音響作業全体に目を配っていた整音監修の井上さん曰く、
「1日に3箱食べていたんだよ……」
との証言。
これから、宣伝展開、全国キャンペーンと激務が続く、鈴木プロデューサーの血糖値は、大丈夫なのか……?
『慌てて運動不足解消をする鈴木プロデューサー』
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「どれくらいの分量なのか?」
という、質問のメールを頂きました。
何とタイミングの良いことでしょう。
実は先日、「ゲド戦記」の動画を整理したばかりで、76000枚の動画を詰めた段ボール箱が、今まさに、制作部の後ろに積んであるのです。
『さすが慎太郎、○○○座りが板についています』
皆さんに大きさを感じて頂く為に、久々に、慎太郎(もう、新人とは呼ばないゼ!)」に、登場してもらいました。
大人が1箱抱えるのがやっとの段ボール箱28箱に、
巨大段ボール箱2箱!
Dさん、これで答えになったでしょうか?
ちなみに、この段ボール箱に入っているのは「動画」だけです。
つまり、これとは別に、1236カット分の原画と、背景美術が存在する……という事です。
スタッフの皆さま。
本当にご苦労さまでした……。
ついにシャチが、スタジオジブリ3階まで到達しました!
『証拠写真』
こいつは映画完成前に、縁起が良いワイ!
シャチへ
次は、大空を目指せ!
その様子は、追ってまた、レポートします。
今回は、「原画」作業の次の段階、「動画」について書いてみましょう。
『ゲド戦記・制作フロー(クリックすると拡大)』
●動画とは何か
前回、「原画」とは、キャラクターの動き(=演技)を作り出してゆく作業だということを紹介しました。
しかし、それだけではキャラクターは完成しません。
原画アニメーターが、監督の演技指示の下、比較的ラフな線で、キャラクターの動き=演技を描き出してゆくのに対し、動画アニメーターは、原画の線をクリンナップし、動きのキーとなる部分のみ描かれている原画の画と画の間の動きを埋めてゆく、中割(なかわり)という作業を行います。
動画作業を理解するポイントは二つ。
「クリンナップ」と「中割(なかわり)」という言葉を、、覚えてください。
■クリンナップとは
原画のラフな線だけでは、適切に色を塗ることが出来ませんし、見た目にも統一感の無いモノになってしまいます。
クリンナップとは、ラフな原画の線を、最終的に画面に映し出される状態である一本の綺麗な線に描き起こす作業。僕らが実際に、テレビや劇場で目にするキャラクターの線は、動画アニメーターが描いたものなのです。
『原画の線(作監修正済み)』
『動画の線』
『完成画面』
以前のコラム「ゲド戦記の作り方・番外編」でも解説していますので、参照下さい。
■中割(なかわり)とは
前回、原画とは、一連の動きの中の、「キーとなる部分の絵を描く」と、書きました。
しかし、この原画だけを単純に再生すると、当然、ある動きとある動きの間に絵が存在しない為、パカパカとストップモーションの様に、見えてしまいます。
最終的に、スムーズな動きとして演技を完成させる為には、動画アニメーターが、原画と原画の間に新しい絵を描き埋めてゆく、「中割」という作業が必要なのです。
『中割の仕組み(クリックすると拡大)』
上が原画、下が動画です。
原画2枚の間に、更に2枚の動画が、追加されている事がお解りになると思います。勿論、元の原画の線も、キレイにクリンナップされています。
原画アニメーターと同様、動画アニメーターにも、この間の動きをイメージする為、演技に対する深い理解が必要とされるのです。
こうして、動画アニメーターが線を整え、原画と原画の間を埋めてゆく事により、綺麗な線で、スムーズな動きが完成します。
最終的に、このカットで動画アニメーターが描いた絵は、以下の通りになりました!
『左上から右へ見ていって下さい(クリックすると拡大)』
このサムネイル画像では、目を開く動きは省いてありますので、実際にはもっと多くの枚数を描いている事になります。
気の遠くなるような作業ですよね。
「ゲド戦記」では、最終的に、76000枚の動画が描かれました。
しかしまだこれで、終わりではありません。
全ての原画を、作画演出と作画監督がチェックをする様に、動画は、動画検査スタッフが1枚1枚全てチェックし、線が乱れていないか、動きはスムーズになっているかを確認し、初めて完成となるのです。
「ゲド戦記」では、動画検査の舘野さんと中込さん、補佐の藤井さんが、膨大な量の動画をチェックしていました。
こうして、キャラクターの動きは完成します。
この線画は、1枚1枚コンピューターに取り込まれ、仕上げ部で着彩されることになります。
次回は、レイアウト作業から並行して進められている、映画のバックグラウンド=「背景美術」について、書いてみたいと思います。
東京・東小金井は、昨日の大雨から一転、暖かな日射しが降り注いでいます。
先週の土曜日は、「ゲド戦記」ダビング作業の、プリミックス最終チェックが行われました。
──と、これだけでは何のことだか解りませんよね(笑)
今日は、映画の音響作業についての解説から始めましょう。
以前にも書きましたが、映画は映像だけでは成立しません。完成した映像の上に、「音」という新たな息吹が吹き込まれて初めて、映画に世界が生まれるのです。
映像に音をつけてゆく作業の事を、ダビング(DB)と呼びます。
『火曜日の、ダビング作業の様子』
監督日誌でゴロウ監督が、「宇宙戦艦のよう」と記した様に、実際の劇場と同じく防音されたスタジオで、前方に見えるスクリーンに映像を投影して、音をつけてゆきます。
それでは、映画にはどのような音響が必要なのか?
ポイントは、3つです。
1.台詞
2.効果音
3.音楽
実写と違い、全てを一から描かなければならないアニメーションは当然、完成した映像は「無音」の状態です。キャラクターに声を吹き込み、画面を構成する全てのモノの発する音(効果音)をつけ、主人公の感情に寄り添い、時には壮大なシーンを盛り上げる、音楽があって初めて、「映画」たり得るのです。
「ゲド戦記」では、音楽家の寺嶋民哉さん、効果(音)の笠松広司さんの創り出した音を、整音の高木創さんが、とりまとめています。
実際の作業は実に複雑で多岐に渡るのですが、以下の写真をご覧下さい。
いくつものボタンが配置されているのがお解りになると思います。
このボタン一つ一つに、台詞や効果音、音楽といった、様々な音が割り当てられていて、高木さんが、ゴロウ監督と相談しながら、それぞれのボリュームやバランスを調整しながら、音を作り込んでゆくのです。
これまで音響スタッフは、「プリミックス」という、音の仕込み作業を続けていました。
土曜日に行われた最終チェックは、ゴロウ監督、鈴木プロデューサーと音響スタッフが、音のついた映像を全体を通して観て、「これで行こう!」という確認をする為に行われたのでした。
ここで多くを語る事は止めておきますが……僕は、何度鳥肌が立ったかわかりません!
そして今日からは、音を最終的に確定する作業「ファイナルミックス」が始まります……!
不定期更新になってからも、毎日訪れて下さっている読者の方々から、この間、沢山の感想のメールを頂きました。
本当に、ありがとうございました。
今週末から来週にかけては、映画完成へ向けた作業が目白押し。
またまた張り切って、映画完成日(初号)の日まで、更新してゆきたいと思います。
「監督日誌」で、ゴロウ監督が書いていた通り、現在、映画「ゲド戦記」は、音響制作の真っ最中。
この間「制作日誌」では、映像が完成するまでの過程を紹介してきました。しかし、映画は映像だけでは成立しません。
役者の皆さんが吹き込んだ「台詞」と、映画世界の実在感を決定づける「効果音」、寺嶋民哉さんが奏でる壮大な「音楽」。この3つが、完成した映像にのせられ、初めて映画は、完成するのです。
現在、東京都内のスタジオで、音響スタッフが泊り込みで音響作業を進めています。
本日、ゴロウ監督、鈴木プロデューサーが全体を通してチェックをした後、来週から「ファイナルミックス」という、音響制作における最終作業が行われる予定。
今日のチェックには、僕も同席する予定ですので、その様子はまた追って、レポートしたいと思います。
さて、本題。
「ゲド戦記」の映像はどうやって生まれるのか。
その制作過程を紹介しているコラム、「ゲド戦記はこうして生まれる」。
この間、4回に渡って、映画の全体制作工程、絵コンテ、映画の画面の構図を決定する「レイアウト」作業について、描いてきました。
今回は、アニメーターが、実際にキャラクターを動かす(=演技させる)「原画」について書きたいと思います。
●アニメーションとは
アニメーション(animation)の語源は、「animate(生命を与える)」という言葉に由来すると言われています。文字通り、紙の上のキャラクターを描き出し、動きという命を吹き込む、という意味ですね。
アニメーションと、ひと言で言っても、粘土細工を少しずつ動かしながら撮影する「クレイアニメーション」や、コンピューター上で構築された、立体的なキャラクターを動かす「3DCGアニメーション」等、いまやその手法は多種多様。
ここでは、スタジオジブリ作品や、多くの日本のテレビアニメーションで使われる、線画で描かれた平面的な絵を動かす手法「セルアニメーション」について解説します。
まずは、以下の制作フローをご覧ください。赤く囲まれたところが、今回紹介する「原画」作業です。
『ゲド戦記・制作フロー(クリックすると拡大)』
大雑把に言ってしまえば、「原画」とは、誰もが一度は、ノートの端っこに描いたことのある、「パラパラ漫画」そのもの。
1枚1枚の止まった絵を、連続して描き、それが再生される事によって動いて見える。
原画アニメーターとは、この、原理としては実にシンプルな現象を利用し、高度なテクニックによって、キャラクターを動かす、プロフェッショナルたち。
単純に絵が上手なだけでは、アニメーターにはなれません。
監督や、作品の要求する、カットごとのキャラクターの演技から心情に至るまでを、キャラクターに乗り移って、まっさらな紙に描き出してゆく。
実写映画にたとえると、原画アニメーターとは「役者」である、ということが出来るでしょう。
●具体的な原画作業
この間取り上げてきた、「ゲド戦記」の主人公アレンが、ゆっくりと顔を起こすカットを元に、具体的な原画作業を、解説してゆきましょう。
これが、完成画面です。
そして、第2弾の予告編の後半の、このカットの動きを、じっくり観察してみてください。
うなだれていた少年が、目を開き、目線の先を追いかけるように、顔を起こしてゆく……。
秒数にして10秒前後のカットですが、少年の目線の流れや、首の重さが表現された、シンプル故にとても難しい動きです。
原画アニメーターは、監督との打ち合わせを元に、頭の中で、アレンの動きをイメージします。
アニメーターの机の上には、必ずストップウォッチが置いてあります。絵コンテで指定された秒数の中で、どのようなタイミングでキャラクターに演技をさせるか……。
現場からは、
ジー……カチッ ジー……カチッ
という、アニメーターがストップウォッチで、演技プランを確かめている音が聞こえてきます。
実際にはもっと細かい工程がありますが、原画アニメーターは頭の中で演技プランを立てた後、動きのキーとなる絵を、作画用紙に何枚か描いてゆきます。
『最初の絵』
『目が開かれ……』
『首を起こしかけた真ん中の絵』
『最後の絵』
実際には、もっとラフな絵を、何度も描き直して演技を組み立ててゆきます。
原画の描き方は人によって様々です。まずは全体をラフでバーッと描いてしまう人もいますし、頭から順番に描いてゆく人もいる。今回解説したのは、キーとなる動きを最初に決めて、その間を埋めてゆくという、基本中の基本の描き方です。
この、キーとなる絵と絵の間を、更に細かい動きで埋めてゆき、頭の中のイメージを、紙の上に描き出してゆくのです。
『作画用紙を何度もめくりながら、演技のチェックをしている作画演出の山下さん』
こうして、このカットは、最終的に12枚の原画で構成されることとなりました。
『左上から下へ見ていってください』
会話や激しいアクション、草木が風に揺れる動きから水しぶきまで。
原画とは、森羅万象を真っ白な紙の上に描き出す、とても創造的な仕事なのです。
●作画演出と作画監督の仕事
仕事柄、僕はスタジオを訪れる方々に、アニメーターの仕事について解説する事が多いのですが、決まって、こういう質問を受けます。
「何人ものアニメーターが、みんな同じ絵を描けるんですか?」
アニメーションは、皆が手分けして描く集団作業ですから、ひとりのスタッフがすべてのカットを描く、というわけにはいきません。当然、一人ひとり、描くクセも違いますし、演技に対する考え方も違います。
どんなに似せて描こうとしても、まったく同じ、というワケにはいかないのです。
それを取りまとめるのが、この間、制作日誌でも何度も登場している、作画演出の山下さんと、作画監督の稲村さんです。
「ゲド戦記」では、キャラクターの動き=演技を、山下さん。
キャラクターの表情やフォルムを、稲村さんが、取りまとめていました。
各原画アニメーターが描いた原画は、山下さんと稲村さんのところへまとめられます。
ふたりは、ゴロウ監督と相談しながら、原画の上に新しい紙を載せ、上から修正してゆくのです。
各原画スタッフが手分けをして描いた絵の、演技と造形を最終的にとりまとめるこの二人の修正が入って初めて、作品全体を通したキャラクターのフォルムから演技、感情の動きまでが、完成されてゆくのです。
『アレンを描く稲村さん』
今回紹介した原画は、稲村さんの修正済みのものを掲載しています。
正確に言うと、「作監修正済み原画」であるということを、記しておきたいと思います。
次回は、動画について、解説しましょう。
今回は、アニメーション制作現場における、具体的な「レイアウト」作業について、解説したいと思います。
次の、制作フローをご覧下さい。
『ゲド戦記・制作フロー(クリックすると拡大)』
赤く囲まれたところが、「レイアウト」作業です。
●レイアウトとは何か
何でもよろし。
好きな俳優の映っている映画の画面を、頭の中に思い浮かべて「一時停止」をしてみてください。
どんな画面でしょうか?
それは、海辺にうち捨てられたピアノを弾くヒロインの姿かもしれず、今まさに、銃弾の飛び交う港へと上陸せんとする兵士たちの後ろ姿かもしれず、マントを翻して摩天楼のてっぺんから飛び降りようとする、ヒーローの姿かもしれません。
映画における、ひと区切りひと区切りの映像を、「カット」と呼ぶ。本コラムの第2回で、映画を構成する最小単位について書きました。
皆さんが今思い浮かべた映像は、「一時停止」していますから「カット」という事になりますね。
カットの中には、風景があり、建物があり、人物がある。
これが、「レイアウト」です。
もう少し、詳しく解説しましょう。
当然の事ながら、実写映画は、実際にカメラを回して撮影をします。
監督とカメラマンは、カメラのファインダーをのぞき込みながら、風景や室内の、ドコを切り取りたいのか──役者をどのように配置し、どう演技させたいのかを決め込みます。
これを、現場では「構図」や「カメラアングル」を決める、と言ったりします。
アニメーションに置き換えてみましょう。
この間、何度も書いてきた通り、アニメーションは、画面を構成する情報全てを、人間の手によって描かなければなりません。実写映画で、監督とカメラマンが、画面の「構図」を決めるのと同じように、アニメーターが、画面の構図を紙に描き起こしたもの──それを「レイアウト」と言います。
●具体的なレイアウト作業
この間、制作日誌で何度か、「作画打ち合わせ(作打ち)」の様子をレポートしてきました。
監督は、原画アニメーターに、画面で何を表現したいのかを、1カット1カット、細かく指示してゆきます。
これが、実際の映画の完成画面。
この映像を目指して、スタッフは紙に絵を描き出してゆく訳です。
監督と作打ちをした原画アニメーターは、一番先に「レイアウト」を描きます。
『これがレイアウトです』
良く見てみましょう。
キャラクターがどのようなポーズでいるのか、その後ろにはどのような背景があるのかが、描きこまれていますね。
次に、原画アニメーターが描いたレイアウトを、監督と作画演出・作画監督がチェックします。(レイアウトチェック)
監督の意図通りに、キャラクターや背景が配置されているかどうか。細かい演技指示や、背景をどのように描いて欲しいか等を、更に具体的に指示してゆきます。
『少年の起きあがりの指示』
『少年が起きあがった後の指示』
監督と作画演出・作画監督のチェックを受けたレイアウトは、原画アニメーターの元に戻され、原画作業が開始されます。
いかがでしょう?
レイアウトが、1カット1カットの画面を形作る、最も基本的で重要な作業である事が、お解り頂けたのではないでしょうか。
●背景美術もレイアウトから始まる
もう一度、先ほどの「制作フロー」を見返してみてください。
赤く囲まれた「レイアウト」が、右にのび、「背景原図」となっています。
この背景原図とは、レイアウトのこと。
アニメーターが描いたレイアウトは、背景美術スタッフに渡され、「背景原図」と呼ばれるようになります。
アニメーターは、レイアウトのコピーを元に、次回で説明する、キャラクターの演技「原画」を描いてゆきます。
何故、アニメーターと背景美術スタッフが、同じ「レイアウト(背景原図)」を共有する必要があるのか?
本コラムの第2回「絵コンテ・キャラクター・美術ボード(後編)」で、アニメーションの画面は、キャラクターと背景の、大きくふたつに分けられる──という見方を紹介しました。
アニメーション制作は分業で行われますから、アニメーターがキャラクターを、背景美術スタッフが、背景を描きます。
でも、各々がまったく別なイメージや考え方で絵を描いてしまったら、最終的に両者が合成されたときに、てんでバラバラな絵になってしまいますよね。
そこで、画面を構成する情報の元となるのが、「レイアウト」なのです。
監督と作画演出・作画監督のチェックを経たレイアウトから、アニメーターが原画を描いてゆくのと同じように、背景美術スタッフもまた、レイアウトを元に、背景を描いてゆきます。
原画・背景の具体的な作業に関しては、また後日解説しますが、アニメーターと背景美術スタッフが別々に作業を進めていても、レイアウトが同じであれば、最終的に合成された画面で、キャラクターと背景にズレが生じないことが、お解り頂けるのではないか、と思います。
実は、もう少し厳密な取り決めや指示があるのですが……複雑になりますので、今回はこれくらいにしておきましょう。
次回は、キャラクターに、「動き」という命を吹き込む、原画アニメーターの仕事について、書いてみたいと思います。
今朝は10:00から、ゴロウ監督・映像演出の奥井さん・美術監督の武重さんと、「ゲド戦記」のフィルムチェックを行いました。
「あれ? 映像は完成したハズなのに、まだチェックが必要なの?」
と、思われた方もいらっしゃるかもしれません。
去る5月23日(火)に、最後のラッシュ上映が行われ、映画「ゲド戦記」の映像は全て完成しました。
ジブリに限らず、現在、アニメーションの制作現場では、線画と背景を手で描いた後(線画と背景も、コンピューターで描く作品もあります)、それらをパソコンに取り込んで、以降の作業をデジタル上で行うようになっています。
この間の完成映像のチェックも、デジタルデータを上映して行っていました。
しかし、僕らが実際に映画館で観る映画は、DLP(デジタル上映)も普及し始めたとはいえ、まだまだ、映写機による、フィルム上映が主流です。
『映画の冒頭・トトロマーク部分のフィルム』
『フィルムをかけて上映する映写機』
そこで、デジタルデータを、最終的にお客さんに観て頂く状態である、フィルムに変換(焼く)する作業が必要になってくるのです。
現在は、デジタル上で作った映像を、ラボ(現像所)で、最終的にフィルムに焼く作業が進められているところ。
デジタル上で作ったデータを、フィルムに焼く(感光させる)ことを、「フィルムレコーディング」と言うのですが、今日のチェックは、フィルムに焼かれ、実際に映画館で皆さんが映画をご覧になる状態と同じものを、メインスタッフでチェックした……という訳なのです。
クッキリハッキリとしたデジタル映像も良いものですが、発色が良く、全体的にしまった感じに見えるフィルムの質感は、「これぞ映画!」とうならされるモノ。
なんだか、実際に劇場で映画を観ているようで、ちょっとドキドキしちゃいました(笑)
ゴロウ監督以下、メインスタッフの感触も上々です!
ジブリ公式HPで、広報部長の西岡さんから発表がありましたが……。
映画「ゲド戦記」の公開日が、7月29日(土)に決定しました!
現場スタッフにとって、公開日は作品のスケジュールを推し量る最大の興味ごとであり、Xデイ。
僕らの使命は、限られたスケジュールの中で、どれだけ質の高い作品を作ることが出来るか……なのですが、公開日が判っていると、ついつい「だったらもう少し」と欲張りたくなるモノ。
という訳で……(というと語弊があるのですが)、毎度毎度鈴木プロデューサーは、公開日をギリギリまで教えてくれません(笑)
僕ら制作部も、(予想は立てていたものの)現在劇場に掲示され始めている筈の、第2弾ポスターを見てはじめて、知ったのでした(笑)
さて。
アフレコも終了し、「ゲド戦記」の制作は、「ダビング(DB)」という作業にシフトしています。
ダビングとは、台詞・効果音・音楽といった、「音」を、完成映像に合わせてとりまとめてゆく作業。
正確に言うと、現在は、アフレコで録音した役者さんの声を、完成した映像に仮に載せる作業中。効果音・音楽スタッフが、別班で、来るべきダビング作業の準備を進めているところです。
ゴロウ監督の取材も本格化し、来週からは、フィルムチェック、イベントへの出席、ダビング作業と、盛りだくさんです。
現在の映像制作現場の様子は、こんなカンジ……。
『ガラーン……寂しいので、第2弾ポスターを掲示しました(笑)』
制作休暇があけて、次の仕事に入っているスタッフもおりますが、現場にスタッフは戻ってくるのは、来週からになります。
スタッフの皆さん、ゆっくり休めましたか~?