2003年10月

10月1日(水)
 今日から10月。毎月、月頭に制作にあるスケジュール表を更新しているのだが、さすがにこの季節位になると、ちょっと辛くなってくる。

 夜、作画の部屋から突然「キャー!!」と絹を切り裂くような女の悲鳴が、慌てて行くと「ゴキブリがー!」と。見つけて追いまわすと別の作画の方が踏んづけて退治。「ホッ。」としたスタッフに向けて制作神村氏は、「これで安心して作業できますよね!! さあ仕事仕事」と一言。えーえー制作は、人の皮を被った鬼ですともさぁ。


10月2日(木)
 制作渡辺氏が復活。実は、扁桃腺が腫れて寝込んでいたのだ。しかし、体調はまだ良くないらしく、夕食は、質素に「おかゆ」でした。このまま体調が悪ければ、きっと痩せる!

 夜に先月のデーターをまとめて見ると、スタッフの頑張りが功を奏し中々良い数字。しかし、全体を見ると、まだほんの僅か・・・。しかもコンテは、まだ完成していない。何故か突然不安に襲われる制作であった。


10月3日(金)
 夕方、制作の斎藤君と伊藤君が外回りに出かける。暫くして戻って来るが、こそこそ会社に入り慌てて又外に、居村君と「どうしたんだろう?」と話していたが、再び帰って来た時に確認すると、外注さんに入れる物を持って行くのを忘れ、先方の会社の前に着た時に初めて気付き戻って、又出発したとの事。何時もは、一人なのだが、二人だったのでお互いに持って来ているだろうと思っていた様だ。二人共気が付いて無いと思っていたようだが、甘い。しっかり戻って来ているのを確認していたのだ。


10月4日(土)
 明日行われる2004年度研修生試験の準備をスタッフが帰ってから行う。下準備は、制作総出でしていたので、滞りなく作業は無事終了。

 週末になると必ず上がってくる原画。制作は、この瞬間がたまらなく嬉しい。しかし、今週は、少しばかり予定数に届かず。うーん、来週に期待しよう。


10月6日(月)
 さあ新しい週の始まりだーと思ったら、最近の冷え込みのせいで風邪でお休みの連絡がちらほら。作画のスタッフも連日遅くまで作業をしているので、ぼちぼち疲れが溜まってきた模様。

 昨日行われた2004年度作画の研修生のテスト、やはり気になるのか状況を確認するスタッフが。

 毎週月曜日に行われる制作会議。話題は、やはり絵コンテの進行状況。しかし、こればっかりは、予想が付かず只もんもんとするばかり。


10月7日(火)
 未だ予断を許さぬ作画状況。毎週周って、各原画さんに状況確認をしているが、作画INからすでに8ヶ月、少しずつ疲れが出て来ているのか、それとも内容的なものなのか、返事が段々心細いものに。

 巷で話題の?「匠バーガー」なる物を制作皆で食す。結果は、神村氏意外は、「美味い」。神村氏も決して不味いという訳でも無いのだが、コンビニ弁当の味に慣れているため・・・。お値段は、結構高めだが、チャンスがあれば一度お試し下さい。


10月8日(水)
 月に一度のジブリの全体ミーティングがある。各部署の報告と「ハウル」の状況説明。その話しの中で未だに「千尋」の話題がでる。つくづく凄い作品だったんだなーと思う今日この頃。

 先週は、無かったラッシュチェックが本日行われる。大きな問題も無く無事終了。これで、約200cut上がったことになる。


10月9日(木)
 デジタルとは、怖いもので、昔みたいにセルを使って1枚1枚撮影している時には、どこかしら必ず妥協点が有ったのだが、コンピューター化になり、完成前の動きを確認出来たりすると、「もっと」と言う欲が出てくる。そして今日又、1cut新たなリテークが。

 新商品に目の無い制作陣。今日もコンビニで新しい味の「ポテトチップス」4種類を発見。1袋ずつ買わず。まとめて4袋を「大人買い」。


10月10日(金)
 ここ数日動画の流れがかなり良い。そして今日遂に、作監に動画が追いついてしまった。制作神村氏は、ニコニコしながら早速作監へ報告。その知らせを聞いた作監稲村氏は、「はーーーー」と長い溜息一つ。その側で満面の笑みの神村氏。この瞬間がたまらない。


10月11日(土)
 昨日、作監に動画がほぼ追いついてきたと書いたが、今度は、逆に動画さんが手空きにならぬ様に、きちんと管理せねばという事態に。早速、制作の居村・斎藤・伊藤の3人で、対策会議。

 明日は、いよいよ「ツール・ド・信州」アニメ界の自転車好きが一同に集まって、東京から信州までサイクリングをしようという会。しかし、現在の所小雨が降り出し尚且つ、明日は雨との予報。さあ、どうなる。


10月14日(火)
 朝から定例の制作会議。議題は、もちろん作監に追いついた動画の今後対応。しかしながら、当然の如く、ここはやっぱり作監さんに踏ん張ってもらうしかないと結論。但し、手当たり次第に上がって来ても、今後の作業がスムーズに流れないので、今夜メインスタッフの手持ちカットを神村氏が調べる事に。

 雨の中行われた「ツール(ツーリング)・ド・信州」だが、ジブリチームは初心者が多く、雨の中は危険と判断し棄権。途中まで車で行き、晴れた韮崎からの後半32kのヒルクライムに変更する。全工程を走ってきた人たちを抜くのは大変心苦しかったが、出場できなかった悔しさを、この32kにぶつけるもの多数。怪我人も無く、無事終了。う~ん、欲求不満だ。来年まで待ちきれん。因みにパオパオチームから出た「ハウル」作監の高坂さんは、特製の籠付きシングルギアのママチャリ(あれがママチャリかと言う意見もあるが)で出場、見事優勝をとげる。結果、「速い人は、何に乗っても速い」という事。


10月15日(水)
 動画が手空きになる→作監に催促→作監の手持ちが少なくなる→原画を催促の図式の様に、神村氏が原画さんに催促して廻る。

 作画さんだけ催促しても、順調に流れない。午後、渡辺・神村両氏が、美術監督に状況の説明と催促をしに向かう。


10月16日(木)
 演出助手の鳥羽君が、今日もお休み。どうも扁桃腺が腫れて熱があるらしい。そう言えば、火曜日に熱があるようだと言って、体温計で熱を計っていたが、これほど重症だったとは。そう言えば原画さんも一人扁桃腺が腫れて休んでいました。

 さすがにこの時期になってくると、制作も外回りでバタバタ。一人で留守番になることも。そういう時に限って、必ず電話やらレイアウトのコピーやら等々が重なる。何故でしょう。


10月17日(金)
 ほぼ、定例とかした、ラッシュチェックが行われる。これで遂に200cut突破。しかし、コンテがまだ完成していない為、残りの数が。今年中に後、どれくらいチェック出来るのだろうか。そして、今年中に残りカットがわかるのだろうか。それは、神のみぞ知る。

 10月に入り、制作が決めている原画予定数に僅かながら届かない週が続いているため、神村氏が週末確認チェックをしている。


10月18日(土)
 「ハウル」の音ロケに同行している古城さんから、「音ロケ日記」なるものがメールで届く。ジブリ作品は、効果音にも凝るので、今回の舞台にふさわしい場所へ、録音機材を持ち込み環境音等を録音しているのだが、これがなかなか上手くいかないようで、悪戦苦闘している模様。

 社内原画さんの数人の手持ちカットが残り少なくなってきたので、宮崎さんと今後作打ちの予定を確認する。


10月20日(月)
 そろそろ、疲れが出始めたのか、先週の原画上がりが、ここ数週間で一番悪い。しかし、一日一日と確実に日にちを消化しているので、何とかがんばって欲しいものなのだが。こればかりは、原画を描くという苦労を知らない私には、何も出来ないのだ。(なんせ制作な物で)

 昨日は、2004年度仕上研修生の2次試験が行われました。1次試験合格の人も、試験官の人も休日だと言うのにご苦労様でした。作画と同様、近日中に合否の連絡が行くと思います。


10月21日(火)
 昨日、「原画上がりが・・・。」と書いていましたが、なんと昨日今日と連日、原画がそこそこ上がって来ました。「この調子で行くと今月の目標を何とかクリアできそう。」と安心する制作であった。

 ジブリ商品部の安田さんが制作に用事があって来たのだが、制作の机の上の色んな小物を見て「子供の時に何でも買い与えるのも、良くないが、あまり厳しくするとこうなるのか。」と問題発言を。現在2児の母の安田さん、我々を見て今一度、子供の躾を考えてしまったようだ。えぇえぇ当然、我々は、悪い見本ですとも!! もっともっと、おもちゃ会社の手のひらで踊ってやる!!


10月22日(水)
 社内の原画さんが予定通りに手持ちカットが終了。早速、作打ちを行う。もうコンテが殆どありません。さぁどうする・どうする。

 相変わらず、コンスタントに上がる作監上がり。コンスタントに上がる動画。ギリギリのラインでの鬩ぎあい。どっちが勝つか。(動画が勝つことは、ありえませんが。)

 状況を再認識する為に、もう一度スケジュールを確認。あっ、徐々にだが予定ラインとの差が段々広がってきている。「千尋」の時より物の流れが良い分なんとなく勘違いをしていた。年末・年始に向けてダッシュだー。


10月23日(水)
 美術から背景上がりが届いたのだが、これが全てハーモニー!! これを撮影で取り込んで、デジタル画面上で加工するらしいのだが、うーんどんな画面に仕上がるのかが楽しみ楽しみ。

 本日夕方から、突然の大雨。ジブリ1stの玄関先には、雨宿りする方々が。

 ジブリ制作では、代々作業工程別にノートを付けて、上がりをチェックしている。今日、動画検査から上がって来たカットを早速ノートにチェックしようと見ると、ノートの動画上がりの欄にそのカット番号が無い。ノート日付をバックしながら確認しても無い。どうやら記入漏れ。今後もっと大量にカットが流れ始めると洒落ではすまなくなる。ノート記入を徹底する事に。


10月24日(木)
 本日も定例のラッシュチェックが行われる。今回のラッシュチェックでは、スタッフから思わず笑いがこぼれる程ちょっと変わったシーンが。どんな内容かは当然言えませんが、楽しみに待っていて下い。

 明日は、ジブリの定休日。そのせいもあるが、原画上がりが、ぽろぽろと出てくる。う、嬉しい。

 明後日は、2004年度美術研修生の二次試験。これで今年の応募者の試験が終わる。受かった人、落ちた人、さまざまですが、二次試験に来て頂いた皆様、お疲れ様でした。又、試験官のスタッフもご苦労様です。


10月27日(月)
 朝一番で、宮崎さんから絵コンテを渡される。まだ完成はしていないが制作にとっては、何よりの物。定例の制作会議を中止して、コンテをコピーしスタッフに渡す。

 コンテとほぼ同時に、背景も上がって来る。これまた急いで撮影に持って行く。先週から美術は凄い勢いで背景が上がって来ています。おかげでグラフが急上昇。


10月28日(火)
 事前に話しをしていたので間に合った絵コンテ。本日、社内の原画さんと無事作打ち終了。何だが今後は、このペースで常に綱渡り状態で進んで行きそう。

 制作渡辺氏のパソコンがトラブル。初期化して再インストールすることになった。横で神村氏が「無理な事したんじゃないですかー」と笑っていたら、今度は神村氏のパソコンが謎のトラブル、再インストールする事に。人の不幸を笑った罰か。


10月29日(水)
 どうしても動画と背景の上がりカットが中々一致しない。そもそも、スタートは、同じなのだが、レイアウトが上がり、監督チェックを終えた段階から、別々の道を進む為、上がりのタイミングが微妙にずれるのだ。これを調整するのも、もちろん制作のお仕事なのだが、今の所うまく運べていないのが現実。しっかりしろ制作。

  昨日から調子が悪い神村氏のマシン。朝来ると机から没収されて、メモが一枚あるのみ。北川内氏の懸命の努力により夕方無事復旧。しかし、ことごとく調子が悪くなる神村氏のマシン。個人的に使い方が非常に悪いのでは、と・・・。「うーん反論できない」神村氏。


10月30日(木)
 朝、出勤してくると、真っ赤な目をした、少し空ろな武重さん(美術監督)が。引き攣る顔で明るく挨拶を交わし、心の中で頑張ってくださいと願う制作陣であった。

 今月も後一日。これまで唯一順調だったレイアウトが、今週からとうとうスケジュールの予定線を下回りました。残りのほんの僅かな時間に、希望をかけているのだが・・・。でも、作打ちが暫く無かったからなぁ。


10月31日(金)
 10月最後の日に定例のラッシュチェック。今回も無事終了。

 以前にも書きましたが、制作はチェックノートを付けています。そのノートを元にデーターを作っているのですが、これが毎日更新→週単位→月単位、とそれぞれ節目(?)にデーターを整理更新しているのです。そして今日は、月単位のデーター整理なのですが、ちょっとした勘違いから、データーが多少ずれている事が解かり、9月まで戻ってデーターの更新を行う羽目に。まめに整理はするもんですなぁ。危うく、2月まで戻るとこでした。