「野中くん発 ジブリだより」 1月号

 皆様、新年あけましておめでとうございます。本年も宜しくお願い申し上げます。

 さて、スタジオジブリの新作が昨年12月に発表されました。長編アニメーション映画「レッドタートル THE RED TURTLE」です。以前から情報は少し出ていましたが、東宝の今年のラインナップ発表の中で正式に告知されました。キャッチフレーズは「ジブリの新作がフランスからやって来る。」。そうです、この作品はフランスで制作されているのです。監督はマイケル・デュドク・ドゥ・ヴィット。

 もう10年ほど前ですが、ジブリがデュドク・ドゥ・ヴィット監督に〝長めの作品を作ってみませんか〞と打診したのが事の始まりです。監督は「岸辺のふたり」で第73回米アカデミー賞短編アニメーション賞を受賞しているオランダ出身の優れたアニメーション作家で、日本にも多くのファンがいます。彼は高畑勲監督を尊敬しており、ジブリともやりとりがあったのですが、それまで専ら短編を作ってきたこのデュドク・ドゥ・ヴィット監督にジブリは前記の提案をしました。彼が意欲を示したので徐々に話が進み、「レッドタートル」として形になってきたのですが、制作現場はヨーロッパだろうから、ということで、ジブリはフランスの映画会社・ワイルドバンチと共同製作することにしました。ワイルドバンチは世界中に優れた映画(例えば「アーティスト」や「英国王のスピーチ」等)を配給している会社で、製作も行っています。ジブリ作品も北米、仏、極東地域以外のほぼ全世界で配給してもらっており、長いお付き合いがあります。「レッドタートル」の実際の制作は、監督を中心に現地のプロダクションとスタッフによって進められ、いよいよこの春完成予定。昨年12月の発表では高畑監督が「アーティスティック・プロデューサー」とクレジットされていましたが、これは、企画段階からずっと、デュドク・ドゥ・ヴィット監督の依頼により高畑監督が様々なアドバイスを行ってきたからです。そういえば、準備段階でデュドク・ドゥ・ヴィット監督がジブリの近所の部屋に長期滞在し、絵コンテ執筆に専念した、ということもありました。ちょっと面白いエピソードですが、あれももう6年ほど前のことになります。

「レッドタートル THE RED TURTLE」はきっと、美しく、芸術的で感動的な作品になることでしょう。日本公開は今年9月予定。どうかご期待下さい。