2000年12月

12月1日(金)
 12時半より「千と千尋」のラッシュチェックが行われる。これでOK分が250カットを超える。
ようやく某原画マンが作打ちをするも、前の仕事○○○が終わっていないことが発覚。神村氏愕然。

 3スタの「△△△」班に待望のデジカメが来る。しかし、HP用に5年前に購入したがほとんど使われていなかったモノ。しかも30万画素しかない。気を取り直し早速トラックの資料撮影に出かけるも、4,5枚撮っただけで電池消耗マークが点滅。使い物にならず。


12月2日(土)
 昨日使えなかったデジカメのかわりとして、三鷹で新しいマシンを購入。131万画素で2万数千円程。試しに撮ってみるも、昨日のカメラとは比べ物にならないほどきれいに撮れている。

 12月になったということで、神村氏が原画一人づつの机を廻り、「スケジュールが遅れています。早く、丁寧に」とお願いして歩く。


12月4日(月)
 山形さんの作画打ち合わせが行われるが、またまた前の仕事が終わっていないことが発覚。またしても神村氏愕然。

 神村氏が会社のもろもろの懸案事項を持って高橋さんのお見舞いに行く。以外にぴんぴんしていたようだが、今日から鎮静剤をストップされるそうで、痛みの恐怖におののいていたとか。


12月5日 (火)
 ○○○班の模様替えを行う。それにしてもこの班、監督、作監はいるのに演助、制作がまだ決まっていないため、資料集め等雑用をする人がいない状態である。早く割り振りをしなければ。

 「式日」前夜祭が明日行われる予定であるが、○○○はプロデューサーである高橋氏の奥さんが作ったもの。といってもいい加減なものではなく、奥さんがその道のプロだっただけである。当日運搬を頼まれた制作伊藤君は「途中でつぶれたらどうしよう」と怖がっている。


12月6日(水)
 午後突如大和(撮影台1号機)に取り付けていたデジカメがダウン。今までデジカメが故障すると修理に何週間もかかってしまうこともあったことから、これから膨大な背景を取り込まなければならない奥井さんと望月さんは顔面真っ青。早速業者に連絡。

 美術出版社から出ている雑誌「アニメスタイル」(小黒祐一郎編集長)のウェブバージョンがジブリのページ内にオープン。なかむらたかし氏の長大なインタビューは必見。


12月7日(木)
 今日から高橋さんが復帰。制作部では昨日、お尻に優しい穴空きまる座布団を見つけられなかった手前、申し訳ない気持ちでいっぱいで高橋さんを迎えたが、本人はカバンの中から空気式の丸座布団をとりだし「病院に売っていた」と気持ちよさそうに使っていた。

 昨日のデジカメの故障だが、午後業者が修理に訪れ、一旦接続をばらし、組み直して立ち上げたところ、なぜか直ってしまった。原因は不明だがとりあえず望月さんも奥井さんも本気で胸をなで下ろしていた。

 本日から東京都写真美術館で「式日」の上映会が始まる。平日にも関わらず3回の上映で300人以上が見に来てくれた。一回目の上映は立ち見も出た。週末が楽しみ、といいつつ実は今度の日曜日は都合により上映が無いとのこと。


12月8日(金)
 原画スタッフ三人に「千と千尋の神隠し」終了後、△△△の原画を描いてくれるようにお願い。三人共快くOKしてくれる。

 武内さんレイアウト終了。神村氏は「明日から原画をばりばり描いて欲しい」と独り言。


12月9日(土)
 外注原画の○○さんラフレイアウト終了。

 神村氏が同窓会で夕方から大阪へ帰る。制作部では「この時期に何やっとるんや~」と大阪弁で罵声が飛び交っていた。

 ○○さんと○○さんが風邪でお休み。忙しいのと寒くなってきたので体調を崩す人が多くなっている。


12月11日(月)
 一週間もの休みを取って、遅ればせながらの新婚旅行を満喫してきた居村氏が出社。奥さんが飛行機嫌いのため行きは寝台特急「北斗星」のロイヤル、帰りはフェリーのスィートを利用したらしい。行き先は札幌。一日中ひたすら食いまくる旅行だったそうだが、がりがりな居村君の体形には全く変化が見られない。いつもながら食ったものは何処へ行っているのやら・・・。


12月12日(火)
 高橋さん、田居さんがムゼオ・三好氏と美術館の建築現場の見学へ。免許取りたて三好氏のスリリングな運転に加えて、建築現場の予想以上の寒さが、退院したての高橋さんのお尻には相当堪えたらしく、終始辛そうな笑顔を浮かべていた。

 3スタで進行中の「△△△」の参考用色見本を受け取る。早速、出力テストのため仮塗りをお願いする。

 先週の日曜日は、写真美術館の都合で「式日」が休映だったのだが、それを知らずに写真美術館へ100人以上の人達が「式日」を見にやって来たらしい。それを聞いたジブリのスタッフの中には、担当の渡辺さんに「お客さんをなんだと思っているのだ」と激怒するもの多数。実は来週の日曜日も本来休映だったのだが、急遽19:00から1回だけ上映することになる。


12月13日(水)
 定例の連絡ミーティングが行われる。現状報告として現在制作されている各作品の状況が伝えられる。「千と千尋」は現在、コンテが1103カット、88分53秒分がアップ。トータル1300カット、2時間以内の予定で、年内のコンテアップを目指しているとの報告。宮崎監督は何としてもDパートで終わらせると断言しているため、相当分厚いDパートになりそうだ。残り長短合わせた三作品も2本はコンテが、もう一本はシナリオが進行中。ともかく、いよいよ待ったなしの制作体制である。

 社内販売で注文していた「ホーホケキョ となりの山田くん」のDVDが届き、さっそく申し込んでいたスタッフに配られる。


12月14日(木)
 3スタの2階で進行中の「○○○」班に、明日から制作・斉藤君が異動することになる。1スタでただ一人20代の制作となった伊藤君は「不安だぁー」と、びびり気味だった。

12月15日(金)
 「千と千尋」の音響打ち合わせが行われる。今回は6.1chで制作を行うことを確認(Dolby Digital EX&DTS-ES)。また効果音は、サウンドリングの伊藤道廣氏に加え、アニメサウンドプロダクションの野口透氏がタッグを組むことが決定。効果二人体制で臨むのは頼もしい限りだが、今回は相当な量の効果音を作らなくてはいけない内容のため、スケジュールに関して制作・神村氏と激しい攻防が繰り広げられていた。

 夜の9時から吉祥寺にてツール・ド・信州の忘年会が行われる。ジブリ、IG、マッドの各社、大友克洋氏も参加、またこのレース、おっとサイクリングを特集したバイシクルクラブ別冊も届けられ、多いに盛り上がる。


12月16日(土)
 年末恒例のジブリグッズ大バーゲンセールが会議室とバーにて行われる。今年も開場前から行列ができ、11時半のスタートと同時に会場へどっと人がなだれ込んで、激しい争奪戦が繰り広げられた。昼過ぎには会場は宅配便の札を貼った巨大ダンボールの山。合計8万円以上買った人もいたという。

 社内上映会用にロシア・アニメーションのフィルムが届く。「雪の女王」やノルシュテイン作品等、名作のニュープリント版だ。早く見たい。

 今日から劇場予告編が東宝系の映画館で上映されている。

 昨夜絵コンテDパート追加分アップ。これで97分59秒、1200カットを超える。今日朝からの作打ちに備え絵コンテコピーをする。終わったのは朝3時。「これでコンテ終了なら気が楽なのに・・・」と神村氏。


12月18日(月)
 腰痛が悪化したため、制作・出口氏がお休み。そのかわり今日一日中、彼のイスには、隣の居村氏が寂しいからなのか、巨大なぬいぐるみが替わりに座っていた。

 西方より原画さん来社。作業が遅れているので、神村氏がスケジュールを説明し奮起を促す。

 ○○○班準備室の模様替え。片隅に置いてあった特注のコンピュータ机を片塰さんの机と交換する。因にこの机、特注だけあって重さも特注、たかだか30メートルを移動するのに業者を呼ぶハメに・・・。


12月19日(火)
 既にコンテ作業に入っている3スタ1階の「△△△」だが、後半がまだ確定していないため新宿で脚本さんと1時より打ち合わせ。話は和やかに進み、来週頭に決定稿が上がる予定となった。

12月20日(水)
 7時過ぎより試写室にてニュープリントによるノルシュテイン作品、新ガリバーの上映会が行われる。忙しいさなかに行われたため出席者は少なかったが、新ガリバーの面白さに圧倒される。

 徳間社長が使っていたマッサージ器が形見分けとして宮崎監督の元に送られてくる。早速宮崎監督がスタジオの一画に設置、監督を始め何人ものスタッフが試しに使い始める。一村教授のように「気持ちいいよ~」という人がいる反面、「使い過ぎで身体が痛い」という不届き者も。


12月21日(木)
 ラッシュチェックが行われる。

 朝から田村氏の打合わせ。ちゃくちゃくと打合わせが進んでいる。

 年末も押し迫り、神村氏がスケジュールの洗い直しを行うが、やはりとんでもない状況に真っ青となる。早速夜に関係者で作戦会議。


12月22日(金)
 3スタ1階の「△△△」班が、音響監督氏と打ち合わせ。今日は初顔合わせという感じで、監督からの作品に関する説明がメインとなる。

 アビッドの差し替えに編集さんが来る予定だったが、他の作品と重なってしまったため、急遽予定を変更。今後について、神村氏が毎週のラッシュ差し替え日程も視野に入れつつ考慮中。


12月25日(月)
 宮崎監督が○フタヌーンに載っている○田○黄が描いた自転車レースマンガを見て興奮している。昼休みにはその頁を切り取って皆に見せてまわり、いまいち理解出来ない人間には、「面白さがわからない? だからお前は駄目なんだ」とむちゃくちゃな言いがかりを付けていた。漫画自体は自転車好き、ツール好きにはたまらない内容になっている。早く続きが読みたい・・・。

 3スタ班に作画の○○さん来社。映画のお仕事が3月より入るため、1~2月のみの参加になる予定だ。
 「△△△」の解像度のテスト試写がイマジカで行われる。うーんなかなか判断がつきにくい。年明けにもう一度テストをする予定。


12月26日(火)
 神村氏と宮崎監督がスケジュールについて話し合いを持つ。毎週の原画アップ数の実現可能な数字から新たな原画メンバーの補充や、後半のスケジュール調整の話しがなされる。

 野中氏幹事のもと、制作の忘年会が近所の飲み屋で行われる。しかし開始時間になっても鈴木プロデューサーに捕まった野中・高橋両氏を始め、多くのスタッフがなかなか来なかったため、店屋のおやじに「時間に合わせて、鍋や刺し身を用意したのに・・・」と愚痴られてしまう。結局多くのメンバーは30分遅れで来たものの、一番現実を忘れたい神村氏は、緊急のデータ出しの仕事が入り、会自体に出席出来なかった。

 チョコエッグ関東出荷停止の記事が、瞬く間に社内の多くのファンの間にかけめぐり、買い占めに走るモノが多数いた。


12月27日(水)
 「クッキーとビスケットの違いは何か?」「お茶碗に盛ったごはんよりお結びのほうがおいしいのはなぜか?」と、宮崎監督からの矢継ぎ早の難問が演助をを悩ませている。例のごとくネットを駆使してなんとか答えを出すも、監督はいまひとつ納得していない様子。・結石を砕くため、3スタ「△△△」演助・鶴岡氏が今日から入院。来年復帰の予定だ。

12月28日(木)
 昨日制作伊藤君が突然高校球児のような坊主になって出社。そのあまりのイメージの違いに、動画チェックの館野さんが「制作に知らない人が・・・」と演助の高橋氏に相談。高橋氏が「あれは伊藤君では」と答えたところ「顔が違う」と信じようとしなかったとか。

 編集の瀬山さん来社。△△△の作業についていろいろと相談。厳しいアドバイスをもらう。

 宮崎監督が免許の書き換えのため夕方出社。そのためラッシュチェックを6時から行う。今週最後、今月最後、今年最後、今世紀最後のラッシュチェック。


12月29日(金)
 朝から大掃除。建物の廻りから、壁、天井、蛍光灯、勿論机にいたるまで徹底的に掃除する。

 大掃除のさなか2時からNさんの作打ちが行われる。

 夜二馬力にて作画部、制作部を中心とした忘年会が行われる。本日で今年の業務は終了。