「野中くん発 ジブリだより」2018年12月号

 三鷹の森ジブリ美術館の新しい企画展示が11月17日(土)から始まりました。題して「映画を塗る仕事」展。アニメーションの制作工程の中で、キャラクター等の色を決め、その色を塗る部門を仕上と呼びますが、今回の展示はその仕上部門に焦点を当てています。それも少し前の時代の仕上の仕事。コンピューターを使いデジタル技術で色を塗る以前の、セルとセル絵の具を使っていた頃を採り上げています。ジブリ作品で言えば「もののけ姫」までですね。
 
 アニメーションは実写と違い、画面に映るものはすべて描かなければなりません。塗る色もすべて作り手が決めているわけで、そこには演出家の意図があります。キャラクターの性格や心情、物語の中の時間経過や天候、場の雰囲気を表すために、さらには、リアリティと存在感を高め、映画をより豊かで訴求力のあるものにするために、どういう色を塗るのがいいのか。故・高畑勲監督と宮崎駿監督は、これまでの作品において色彩ついてどのような演出意図があったのか。また、監督たちの意図を受けて、色彩設計の担当者は、実際にどういう色を選んで、どうやってセルに絵の具で色を塗ってきたのか。この展示では、各作品の実例を具体的に紹介し、「映画を塗る仕事」の秘密と魅力に迫ります。デジタルペイントになってからは、使える色の数は理論上無制限になりました。しかし、セルとセル絵の具を使っていた頃は、厳然たる物理的制約がありました。当時、制作スタッフ達は、知恵と工夫でどうやってその制約を乗り越えていったのか。今回の展示は、制作当時に使われた実際のセル画を200点ほど展示してそれを説明しており、とても見応えがあります。ここ20年ほど、セル画を目にすることは普段ほとんどないのですが、今回まとまった数のセル画を久しぶりに見て、やはり独特の魅力があるなあと改めて思いました。単純に、見ているだけでも楽しいです。また、580色分のセル絵の具の瓶も雰囲気を出しています。会期は来年11月までの予定。どうぞお越しください。なお、ジブリ美術館は予約制です。
 
 さて、各地を巡回しお陰様で好評の「ジブリの大博覧会」が、12月8日(土)より富山市ガラス美術館で開催されています。今回は9会場目となりますが、富山ならではの新たな展示物も増えているとのことですので、富山県や近県の方はぜひどうぞ。来年2月24日(日)までの開催です。