「野中くん発 ジブリだより」 11月号

 以前にもお伝えしましたが、スタジオジブリでは現在、宮崎駿監督の最新作「毛虫のボロ」を制作中です。三鷹の森ジブリ美術館で上映するための、10本目のオリジナル短編アニメーションとなるこの作品ですが、10月初めに絵コンテが完成しました。今回も宮崎監督は水彩絵の具で絵コンテに色を着けていて、見ているだけで引き込まれます。これがCGで一体どのように映像化されるのか。スタッフも少し増え、制作も本格化しつつありますが、完成まで今しばらくお待ち下さい。そうそう、宮崎監督の着彩画と言えば、最新長編作「風立ちぬ」の原作漫画が本になりました。元々、映画の制作前に9回に亘って雑誌に連載されたものですが、『宮崎駿の雑想ノート』『飛行艇時代』などの本と同様に大日本絵画からの発売です。

 さて、石巻市の石ノ森萬画館では「近藤喜文展」を開催中です。昨年夏に近藤さんの故郷の新潟で開催され、大変好評だったので巡回展が決まったこの展覧会、夏の高松市での開催に続き今回が3か所目となります。『熱風』の読者ならご存じの方も多いと思いますが、近藤喜文さんは大変優れたアニメーターで、「赤毛のアン」「名探偵ホームズ」「火垂るの墓」「おもひでぽろぽろ」などのキャラクターデザインや作画監督を担当し、高畑勲監督、宮崎駿監督の作品を長年支えてきました。世界的に見ても屈指の才能だったと思います。1995年の「耳をすませば」で劇場用長編を初監督しますが、残念ながら98年1月、病により急逝。本当に悲しい出来事でした。この「近藤喜文展」は、まとまった形での初めての近藤さんの展覧会です。ジブリイベント事業室の担当者は、生前の近藤さんと制作現場で一緒に仕事をした、近藤さんをよく知るスタッフであり、近藤さんの絵が元々素晴らしいのはもちろんですが、スタッフの近藤さんへの思いも展示に反映されて、本当にいい展覧会になったと思います。多数の展示品はとても充実しており、ジブリ作品だけでなく70年代の「未来少年コナン」「赤毛のアン」なども幅広く展示されていて見応え十分。来年4月10日(日)までの長期開催ですので、東北地方の方はもちろんのこと、多少遠方の方も、可能ならばぜひご覧下さい。

 最後になりましたが、三鷹の森ジブリ美術館は11月10日(火)から20日(金)まで恒例のメンテナンス休館中。11月21日(土)より再開しますので、企画展示「幽霊塔へようこそ展」ともども、どうかよろしく。