「野中くん発 ジブリだより」 2月号

 先月お伝えしましたように、現在、スタジオジブリは高畑勲監督の「かぐや姫の物語」と宮崎駿監督の「風立ちぬ」を2本、同時に制作しています。まだ公表出来る情報は非常に少ないのですが、記者会見やトークイベントで鈴木敏夫プロデューサーが語った内容などの中から、先月の当欄では書かなかったことをいくつか、今号ではお伝えします。

 まず 「かぐや姫の物語」についてですが、実は、高畑監督は今から50年ほど前、 東映動画(現・東映アニメーション)在籍中に 『竹取物語』の企画を一度検討しています。会社から与えられた課題だったそうですが、取り組むうちに非常に興味が湧いて、これは面白い作品になりうるのではという気がしたとのこと。その後も、(誰がやるかはともかくとして)『竹取物語』はいつか日本人がきちんと映像化すべき作品だ、と高畑監督は折に触れ思っていたそうです。で、「ホーホケキョ となりの山田くん」の後、次回作として当初は『平家物語』を高畑監督は考えていたのですが、この案は難航します。そうするうちに鈴木プロデューサーが高畑監督と『竹取物語』の関わりを思い出してそれを提案、こうして『竹取物語』の映画化に取り組むことになりました。ですから今回のこの企画は、源流にまで遡れば50年に及ぶ歴史があることになります。

 さて、一方の「風立ちぬ」ですが、主題歌について今回、異例の形で進行しました。すでに報道がありました通り、松任谷由実さんのデビューアルバムの曲「ひこうき雲」(荒井由実名義)を主題歌に使わせて欲しいと、鈴木プロデューサーが松任谷さんご本人に対して公開の場でいきなり要請したのです。「魔女の宅急便」の時のご縁で、「魔女」「おもひでぽろぽろ」ブルーレイディスク発売を記念した2人のトークイベントが昨年末にあり、その場での出来事でした。幸いにしてご本人に快諾をいただき、現在手続きを進めているところです。鈴木プロデューサーがこのイベントの少し前に、松任谷さんの曲を復習するつもりでデビュー40周年記念のベスト盤CDを聴いているうちに、「ひこうき雲」の歌詞が「風立ちぬ」にぴったりであることに気付き、宮崎監督に提案したところ、曲を聴いた宮崎監督も大賛成。 そしていきなりの要請となったものです。

 最後に、重大決定が伝わってきたので急遽報告を。「かぐや姫の物語」ですが制作進行状況に鑑み公開が秋に延期されました。「風立ちぬ」は予定通り夏です。