「野中くん発 ジブリだより」2019年12月号

 12月6日(金)より、新橋演舞場では新作歌舞伎「風の谷のナウシカ」を上演中です。主役のナウシカを演じるのは尾上菊之助さん。この舞台は4年前に「ナウシカ」を歌舞伎で上演したい、それも映画版ではなく原作漫画全 7巻をすべて舞台化したいという強い希望が、尾上さんからジブリに寄せられたことから始まりました。言うまでもなく、ジブリ作品や宮崎駿監督の作品が歌舞伎になるのは初めてのこと。どんな舞台になるのか、この原稿を書いている時点では我々もまだ分かりませんが、尾上さん、クシャナを演じる中村七之助さんを始め関係者の熱意はすごいものがありますし、演出のG2さんは長編漫画の歌舞伎化に実績があり、脚本は歌舞伎に詳しい松竹の戸部和久さんと、ジブリ作品を何度も手掛けてきた丹羽圭子さんの組み合わせですので、とても期待しているところです。昼の部、夜の部の通し上演なので、11時開演で終わるのは夜の9時頃とそれだけでも大変ですが、きっと熱い舞台となっているのではないでしょうか。チケットも完売とのことで、有難いことです。
 
 さて、先月もお伝えしましたが、三鷹の森ジブリ美術館では新企画展示『手描き、ひらめき、おもいつき』展〜ジブリの森のスケッチブックから〜が始まりました。実際に展示を見てみると、その内容に圧倒されます。展示品の量がとても多く、しかも私も見るのは初めてという貴重な資料が続々登場。これまでジブリ美術館が開催してきた企画展示の制作時、そしてそもそもジブリ美術館を作る時に、宮崎駿監督がどういう働きをしてきたかを、イメージボードやスケッチ、メモなどで分かりやすく説明しているのですが、改めて、その爆発的な創作力に驚かされました。今更ながら、こんなことにまで意見を言い、案を出しているんだ(それも具体的に)、と感心し、あまりの徹底ぶりに時にはあきれることも。見れば見るほど楽しめる展示ですが、その場にいるだけでも、美術館の舞台裏、"メイキング・オブ・ジブリ美術館"を見ている気分になれますし、ジブリ美術館の約20年に及ぶ歴史を感じることが出来て、〝あの時の自分〞を重ねながら見て行けばある種の時間旅行を体験することも出来ます。2021年5月までの予定ですのでどうぞお越し下さい(ジブリ美術館は予約制です)。
 
 最後になりましたが、「ジブリの大博覧会」が岩手県立美術館で始まりました。こちらもぜひどうぞ。