「野中くん発 ジブリだより」 5月号

 この原稿の掲載号が出るのは連休の後。きっと爽やかな季節となっていることでしょう。「風立ちぬ」(宮崎駿監督作品)ですが、公開日が7月20日(土)に決まりました。4月20日(土)からは劇場で前売券の販売が始まっています。制作状況ですが、作画や美術は終わりつつあり、作業の中心は仕上やポストプロダクション、音の作業になっているはずです。声の収録も進んでいるでしょう。出演者はもう決まっているのですが、この場での発表はもう少しお待ち下さい。一方、「かぐや姫の物語」(高畑勲監督作品)はプレスコなので、かなり前から声はほぼ収録済み。それに合わせてずっと作画をして来ました。こちらはまだ作画も美術もフル稼働中ですが、秋の公開目指して線路の向こうの第7スタジオでひたすら頑張っています。

 さて、三鷹の森ジブリ美術館で開催中の企画展示「挿絵が僕らにくれたもの」展-通俗文化の源流-ですが、いよいよ5月20日(月)までとなりました。19世紀末から20世紀初頭にかけて描かれた童話集の挿絵を中心に展示し、これらの絵の魅力と、後の通俗文化に与えた大きな影響、アニメーションとの関わりを宮崎駿監督自身の解説で存分に感じて頂ける内容になっています。まだの方はぜひお越し下さい。

 そして6月1日(土)からは、新しい企画展示が始まります。題して「ジブリの森のレンズ展」。映画を撮影するとき、そして上映するときに、レンズは無くてはならない物です。日頃、我々の身の回りにも、レンズは沢山存在しています。メガネやコンタクトレンズがそうですし、携帯電話に内蔵されたカメラにも、レンズは必ず使われています。そもそも人間の目自体に、レンズの仕組みが組み込まれています。でも、レンズの働きについては、ちゃんと説明出来る人は意外と少ないのではないでしょうか。レンズを通して覗いてみると、目の前の物の見え方が様々に変わって見えます。今回の展示は、このレンズの働きを、会場内に設置された見世物小屋風の屋台
を渡り歩き、覗きこんでいるうちに、楽しみながら実感してもらえるようになっています。目の前の物の大きさや形、明るさが、レンズを通して見ることで変わる、この不思議な感覚。また、自分たちの手で「動く絵」を壁に映し出すことの出来る展示物も用意しました。映画と、そして"視覚"と切っても切れない関係にあるレンズの魅力を、この展示を機にぜひ発見してみて下さい。