「野中くん発 ジブリだより」2023年3月号

 ロンドンのバービカン劇場で昨年10月から上演されていた、ロイヤル・シェイクスピア・カンパニー(RSC)による舞台版「となりのトトロ」ですが、大変好評でチケットはお陰様で完売となり、1月21日(土)に無事終了しました。そして2月12日(日)、イギリスの権威ある演劇賞の1つであるWhatsOn Stage Awardsにおいて、最多となる5部門(ベストディレクション、ベストセットデザイン、ベストライティングデザイン、ベストサウンドデザイン、ベストミュージカルディレクション/スーパービジョン)で最優秀賞を受賞しました。久石譲さんがエグゼクティブ・プロデューサーを務め、RSCと日本テレビの共同製作となる本舞台ですが、4月に発表されるローレンス・オリヴィエ賞を始め、イギリス演劇界の他の主要な賞についても期待が高まります。

 舞台といえば、日本では昨年、「千と千尋の神隠し」の舞台版が東宝製作、ジョン・ケアードさん演出で初上演されてやはり大変高い評価を受けましたが、その舞台をそっくり収録した映像作品の、北米での配給権をGKIDSがこの度獲得しました。GKIDSはスタジオジブリの長編映画の北米での配給元であり、世界の優れたアニメーション映画を沢山配給している会社です。早速4月下旬に、北米の映画館で舞台版「千尋」の映像作品が上映される予定です。

 このように、海外でも、スタジオジブリ作品は単に映画が公開されるだけでなく、映画とは別の形になって、新しい展開を見せることが珍しくなくなってきました。そうした広がりの1つに、フランスのオービュッソンで制作されているタペストリーがあります。オービュッソンのタペストリーは、同地で長年制作されてきた、伝統ある工芸品であり美術品ですが、ジブリ作品の1シーンを描いた、幅、高さ共に数メートルもある巨大なタペストリーの制作が数年前から進められてきました。そして昨年3月に「もののけ姫」をテーマにした最初の1点が完成し、今年1月には「千と千尋の神隠し」の1点が完成。さらに「ハウルの動く城」の2点が今年中に完成予定です。完成品はオービュッソンのタペストリー専門のミュージアムで展示中なので、今のところ現地に行かないと見られませんが、写真や動画だけでも、その素晴らしさは感じられます。

 今後も世界各地で、ジブリ作品を元にした様々な展開があることでしょう。