「サツキとメイの家」についてのお詫び

「サツキとメイの家」についてのお詫び

 現在愛知万博で公開中の「サツキとメイの家」の事前予約制に関して、この度、博覧会協会から、LAWSONのLoppiを使用する予約システムを取りやめ、ハガキによる申込み抽選方式に、予約方法を変更する旨の連絡がありました。スタジオジブリとしては、代替案を提示できないので、協会側の案に従わざるを得ないと判断しました。

 利便性が良いと考えて、スタジオジブリが推薦したLAWSONの予約システムでしたが、LAWSON店頭並びに電話予約に申込が殺到し、ほとんどの人が予約券を購入できないばかりか、LAWSON店頭及び周辺住民の方々にご迷惑をおかけしたり、システム障害等により混乱を招きました。

 こうした事態を招いた要因は、スタジオジブリ側に、「サツキとメイの家」の予約も「三鷹の森ジブリ美術館」と同じ予約方法であれば大丈夫だと考えた判断の甘さにあります。これについては、本当にジブリ側の落ち度であり、ご迷惑をおかけしたファンの皆さま、博覧会協会の皆さま、LAWSONの皆さま、その他関係者の皆さまに、心からお詫び申し上げます。

 この場をお借りして、ここにいたった経緯を説明させていただきます。


1.全てのはじまり

 そもそも、スタジオジブリが「愛・地球博」にかかわることになった経緯をお話しすると、2003年の春までさかのぼります。

 博覧会協会の催事総合プロデューサーである矢内廣氏が、ジブリの宮崎監督と私を訪ねて来られたのは2003年4月の某日でした。博覧会の催し物すべてをプロデュースする責務を負った矢内氏の頼みごとというのはただひとつでした。博覧会のステージで「風の谷のナウシカ」のミュージカルを上演させて欲しいと。スタジオジブリとしては、この申し出に大変悩みましたが、これまでも同様な企画をお断りし続けてきたこともあり、結果としての返事はノーでした。

 しかし、話し合いは思わぬ方向に進展します。その話し合いの席の雑談の中で、宮崎監督は矢内氏に「映画を使って何かをするのなら、トトロの草壁家を再現してみたらおもしろいのではないか」という話をしました。すると、それを受けて矢内氏は、「本当にトトロの草壁家をつくりませんか」と、新しい提案をしてきたのです。つまり万博会場内に実物大の、細部までこだわった、昭和30年代にあったであろう家屋を建てようというのです。この矢内氏の意外な提案に、思わず宮崎監督も私も同意したのです。

 この結果に矢内氏は喜び、瞬く間に「サツキとメイの家」は現実化することになり、博覧会協会の事業としてプロジェクトは始動したのでした。

 はじめは万博会場内の候補地探しでした。2003年5月の末に矢内氏に連れられ、私と三鷹の森ジブリ美術館の宮崎吾朗館長が万博会場を訪れました。矢内氏は会場内の数箇所の候補地を案内しました。すでに全体計画が決まった後で新たな場所探しが困難な中で選ばれた場所は、長久手会場の森林体感ゾーン内の「ひょうたん池」の畔。企業や海外のパビリオンがあるゾーンからはかなり離れた森の中です。ここなら「サツキとメイの家」を建てるのに最も相応しいと関係者一同が同意したのです。

 森林体感ゾーンは一日の入場者数が全体で4000人ほどに限られ(当初の予定)、そのうち「サツキとメイの家」の候補地があるエリアは、「自然体感プログラム」の参加者だけが入場できる計画でした。これなら人ごみの喧騒とも無縁の、静かな展示が実現できるはずでした。

 つまり、「サツキとメイの家」は森林体感ゾーンで行なわれる「自然体感プログラム」(森の自然学校)の参加者が途中で立ち寄るプログラムの一つ、という認識で当初は出発したのです。炎天下に歩いてきた子供たちに、冷たい麦茶やラムネを飲んでもらったり、井戸で手足を洗ってもらったりすることを前提としているのであって、何千、何万人もの大勢の観客に観てもらうことは一切考えていませんでした。


2.そして建築が始まった

 「サツキとメイの家」は企業出展のパビリオンではありません。博覧会協会の事業であり、予算は博覧会協会のものです。従って、博覧会協会が建設し、ジブリは監修するというのが当初の話でした。しかし、博覧会協会側にはこうしたものを製作するための専門家はいませんでしたし、建物も特殊なものでしたので、時間のない中でクオリティーの高いものを作るには初めからジブリに任せたほうがよいと協会側で判断され、その旨がジブリに伝えられました。

 そこで、宮崎吾朗館長を筆頭に「ジブリ美術館」を作ったスタッフが集められ、建設事業は、博覧会協会から株式会社マンマユート団(ジブリ美術館を建設した事業会社)が受託することになりました。こうした経緯を経て、2003年12月4日に「サツキとメイの家」の建設が正式に発表されました。

 2003年の暮れから鹿島JVによる基盤工事が始まり、家自体を建ててもらうのは「職人が作る木の家ネット」の中村武司氏を中心としたグループにお願いしました。詳しくは触れませんが、中村さんの若さと情熱、そして昔ながらの工法にこだわっているという点に共感したからです。設計は、ジブリがいつもお世話になっている山田建築さんを中心に大工さんたちと熱い討論を重ねて出来上がって行きました。

 2004年3月に安全祈願祭が行なわれ、6月には棟上と、順調に「サツキとメイの家」は出来上がってきたのですが、一方でその間に、「愛・地球博」の告知も次第に増え、「サツキとメイの家」は博覧会の数あるパビリオンや催事の中でも世間の大きな注目を浴びるようになりました。そして、その期待の大きさからか、いつの間にか「サツキとメイの家」は万博の目玉の一つとして扱われるようになっていきました。

 それは、おのずと「自然体感プログラム」の一部をなす単なる建物から、独立した一つの「パビリオン」になるということでした。ジブリとしても、せっかくいいものをつくったからにはなるべく大勢の人に見てもらいたいという気持ちがありましたので、より大きな扱いになっていくことには異を唱えることはありませんでしたが、本来ならこの時点で、「サツキとメイの家」が独立した「パビリオン」として運営できる構造にあるのか否かを博覧会協会側と十分に協議するべきでした。

 しかし、この時点では、博覧会協会側から運営についての具体的で明快な考えは聞けませんでした。当初の位置づけと、反響の大きさとの間のギャップのために博覧会協会もなかなか方針を打ち出しにくかったのだと思います。

 そして2004年10月、いよいよ建物の完成間近という時期になって、「サツキとメイの家」の運営の基本方針をめぐって、博覧会協会とジブリの間で話し合いがもたれたのでした。


3.完全予約制の導入

 計画当初には大勢の人を受け入れることを想定していなかった「サツキとメイの家」をどのように見学してもらうか、その可能性について、さまざまな検討が行なわれました。博覧会協会側は、「せっかく作ったものはゆっくりと見学して欲しい」というジブリの意見を尊重し、且つ子どもたちに愛されるトトロの家で何か事故が起こってはいけないと配慮してくださり、運営方針についての打ち合わせをジブリと共に行なってくれました。

 博覧会協会の中村利雄総長、矢内氏、私、宮崎吾朗館長が出席しての話し合いの結果は、一日800人の完全予約制の導入です。見学の方法として、構造的に自由見学の回遊ルートを引くのが難しいという理由と、せっかく演示にこだわったのだから、靴を脱いで家に上がって体験してもらいたいという思いから、「マンモス」のように外からだけ見てもらう方式の導入をあきらめ、限られた人数のお客さんだけ上がってもらうという方式に決まったのです。

 一日800人の根拠は明快です。朝10時から日没の6時までが「サツキとメイの家」がある「森林体感ゾーン」の開園時間です。これで8時間です。環境保護の理由と警備の関係上、夕方6時以降は一般の観客は何人たりとも残る事ができません。

 また、本来はパビリオンではなく、述べ床面積約30坪の「普通の家」ですから、お客さんの安全や施設の傷みの問題を考えれば、一度に家の中に入れる人数も25人ぐらいが精一杯です(それでも、2階やお父さんの書斎に入ってもらうことはあきらめざるを得ませんでした)。屋内を撮影禁止にしているのも、著作権の問題ではなく人の流れをスムーズにするためなのです(だから外から撮影するのは可)。これが、25人が15分ずつ体験してもらう、つまり一時間で100人、一日8時間で800人の理由です。

 800人限定で見せるとしても、先着順、部分予約制、完全予約制と、方法はいくつかあります。先着順であれば、確かに、ある意味公平かもしれませんし、予約のキャンセルの心配もなく一日800人を確実に対応できることでしょう。しかし、800人限定では朝一番に来場した人しか見学できません。しかも、「サツキとメイの家」は、パビリオンが立ち並ぶゾーンとは遠く離れた森林体感ゾーンの中にあり、メインゲートの北ゲートからは徒歩30分はかかる場所にあります。運良く800番以内に並んで予約券を受け取れたとしても、他のパビリオンとの行き来にかなりの時間を要します。ましてや801番目以降に並んだ人は、せっかく早起きして並んでも何ひとつ観られずに帰るという悲劇に会うということを考えざるを得ません。

 部分予約制にして半分を予約制、半分を先着順にした場合でも、先着順の人数が減る分より熾烈な争いになります。やはり、完全予約制にせざるを得ないという結論になりました。

 博覧会協会としては、世間で話題になっている「サツキとメイの家」をより多くの人に見ていただきたいと考えるのは当然です。そのような状況の中で、人数を限定することに加え、万博では例のない完全予約制を導入することは大変な英断だったはずです。中村総長を初めとする博覧会協会側の理解があってのことでした。

 更に、中村総長は予約が取れなかった人のために、「遠くからでも一目見られるようにしたい」と強くおっしゃられ、予約制の導入とともに遠くから観覧するコースの設定をすることもその場で決まりました。ただ、まずは予約制を成功させることが大切だというジブリ側の主張を入れて、博覧会協会側では早速予約制の具体的な検討に取り組んでくれたのです。


4.まずは博覧会協会の予約システムを検討

 一日平均8万人の入場が想定される万博入場者のうち、たった800人だけが「サツキとメイの家」を見られることを考えたとき、「抽選にする」という考え方は当然ありました。ただ、これは日時指定で受け付けなくてはならず、膨大な手間とコストが発生することを考えて現実的ではないというのが当時の判断でした。

 そこで最初に検討された案は博覧会協会の予約システムでした。2004年11月末に博覧会協会から提案があり、この案を両者で検討した結果、完全予約制の場合には不適当であることがわかりました。

 なぜなら、他のパビリオンは、「完全予約制」ではなく「部分予約制」であり、それに合わせて予約システムが作られているからでした。ほとんどのパビリオンでは、事前予約が入場者の2割、当日予約が2割の合わせて4割が予約分となります。あとの6割は並べば見られるというわけです。ディズニーランドやUSJで行なわれている「ファストパス」の考え方です。ここが全部予約でしか見学できない「サツキとメイの家」とは違うところなのです。

 ファストパスなら許容範囲と思えるのかもしれませんが、完全予約制である以上、日本全国の多くの人にできるだけ不便をかけずに、より均等なチャンスを提供したいと考えると、協会の予約システムにはいくつかの難しい点があることがわかりました。

 第一に、協会の予約システムには、チケット(実券)が持つID番号が必要なのですが、この時点では、事前に出回っていた前売り券の多くは「入場券引換券」に過ぎず、ICチップを埋め込んだID番号付きのチケット(実券)はわずかしか出回っていないと説明されました。これでは前売り券をもっているほとんどの人が予約できません。これは大きな問題でした。

 第二は、インターネット(携帯も可)でのみ事前予約を行なう、という点です。インターネットは電話と違って普及率100パーセントというわけには行かないでしょう。老若男女の幅広いファンを持つジブリとしては、できるだけ間口を狭めたくないと思いました。

 第三に、予約開始日の問題です。博覧会協会のシステムでは、一ヶ月前の当日だけが予約可能となります。つまり、今(たとえば4月15日に)予約すると、一ヵ月後の同じ数字の日(5月15日)のみが予約可能なのです。これでは、今日取れなかった人は、明日、そして、明後日と延々と毎日インターネットに向かわねばなりません。一日800人ですから、あっという間に予約は埋まってしまうでしょう。毎日毎日これでは、ストレスがたまってしまいます。

 これらの理由から、協会の予約システムの導入は見送ることになりました。そこで、ジブリ側が提案し、博覧会協会が採用したのが、ご存知のようにLAWSONのLoppiを使う予約方法です。


5.なぜLoppiによる予約を採用したのか

 LAWSONのLoppiによる予約システムにはさまざまなメリットがありました。前述の三つの問題についても、

  1.入場券のID番号は不要である
  2.LAWSONは全県にある唯一のコンビニエンスストアで全国約8000店、東海地区に約650店がありネットワークとして申し分ない。また、電話による受付も行なっている。
  3.一ヶ月分まとめて予約可能である。

 以上のようにクリアしていると判断しました。

 さらに、「三鷹の森ジブリ美術館」「立体造型物展」「球体関節人形展」「漫画映画の全貌」などのジブリ関連のチケットを発売してきた実績があり、「サツキとメイの家」を観に来るであろうジブリファンの間には予約発券方法として十分に定着している、という強みもありました。

 忘れてはならないのが、告知力です。万博開幕まで残り3ヶ月という短期間の中で、「サツキとメイの家」が完全予約制になったということを、事前に十分にPRしなければなりません。当日、それを知らずに来館して見学できずにがっかりさせることは、なんとしても避けたかったからです。LAWSONの力を借りると、店頭で、パンフレットやポスターで十分に告知をしてもらうことが出来ます。これがLAWSONにお願いする一番の理由だったのです。

 「サツキとメイの家」の予約券は無料です。万博のルールで、入場料以外の料金を取ってはいけないことになっているからです。したがって、実は、LAWSONとしては、この予約を引き受けるということは、身銭を切ることになり大変なコスト負担となります。システムのプログラムにかかる経費や告知の経費は全てLAWSON側の負担です。また、チケット発行の通信料・紙代もLAWSONの店舗負担なのです。

 万博協会にはそれらを負担する予算がありません。そこで、通信料と紙代の分だけは、予約券に広告を入れることでなんとか赤字を出さないような工夫をしたのです。また、LAWSON本社に予約システムの委託費を支払うことができない分は、ジブリ側でLAWSONだけで販売するオリジナルグッズを開発し、何とか穴を埋めていただくよう知恵を絞りました。

 以上のような経緯から、博覧会協会はLAWSONのLoppiを利用した予約システムを採用することに決定しました。博覧会協会にとってLAWSONのLoppiに予約システムを一元化するという決断は大変なことだったはずです。なにしろ、人数制限、予約制に加え、それまで検討されていない新たな予約システムを導入するのですから。

 併せて、博覧会協会では一パビリオンに過ぎない「サツキとメイの家」のために、2004年12月に「サツキとメイの家グループ」を新設し、運営体制を強化してくれました。それまで催事グループの管轄であった「サツキとメイの家」は、中村総長と後藤隆志本部長直轄のこの新しい専任のグループに運営が委ねられることになったのです。

 こうして、LAWSONのLoppiによる予約システムが完成し、最初の発券日である3月1日を迎えることになりました。


6.3月発券の状況

 3月1日、「サツキとメイの家」の予約券は、受付開始5時間あまりで終了、Loppiと電話によるアクセスは24万件に上りました。苦情は寄せられたものの、大きな混乱はなく、予約券の人気ぶりと完全予約制の浸透に、関係者はほっと胸をなでおろしました。

 ただ、直後から新たな問題が急浮上してきました。いわずもがな「Yahoo!オークション」における予約券の転売問題です。

 事前の打ち合わせで、予約券の一部がオークションに流れることは想定済みで、ゆえに、弁護士に相談して、「無料の予約券であっても転売目的で入手し転売すればダフ行為と認められる」ことは確認しており、悪質な出品者は取締りができることを確認していました。さらに念のために、博覧会協会から主なオークション運営会社に対して「予約券が出品された場合削除して欲しい」旨を通達していました。協会側の話によれば、楽天ほかのオークションサイトは削除に応じていただけたのですが、「Yahoo!オークション」だけは、「法律に違反していないものを規制してはオークションの利便性が損なわれる」ことを理由に削除はされませんでした。結果として、「サツキとメイの家」予約券は、3月1日に発券した3万枚のうち500枚ほどがオークションで売買されたようでした。

 さらには、予約したお客さんの13パーセントが来場していないことがマスコミに取り上げられもしました。これは、反対に87パーセントの人が来場していることを意味します。新聞報道によれば、一部を観覧予約に充てる企業パビリオンでは、予約しながら現れない人が30%程度に達する館も出ているとのことです。このことを考えると無料予約券としては驚異的な高歩留まりだと考えられます。

 とはいえ、博覧会協会はこうした批判を受けて、翌月からは、1割増しでの発券を決めました。更に、LAWSONでは、予約申し込みが増えることを予測して、電話回線の増設とサーバの増強を行いました。


7.そして4月に何が起こったか

 4月1日、私たちの予想をはるかに超えた事態が起こりました。午前10時にはLoppi端末が一斉にフリーズ、ようやく動きだした時にはすべての予約が終了しているという異常事態が起こったのです。予約券の配布はわずか70分で終了。東海地区では徹夜でLoppiにお客さんが並んだ店舗や、Loppiの前に50人もの列を作った店舗があったというのに、その人たちはほとんど予約が出来なかったというのです。

 ログを調べてみると、アクセス数は60万件に上っていました。チケットが取れないと苦情が多かったジブリ美術館の開館一年後でさえ9万6千アクセスにすぎないのですから、その突出ぶりが際立っていることがわかるでしょう。

 一部には、電話を利用したチケットゲッターの存在も浮かび上がってきました。電話が自動音声対応なのを利用して、プログラムを組み、電話が繋がると同時に一瞬でチケットを大量に取ってしまうのです。そして、これらのチケットは即「Yahoo!オークション」に出品され、一枚あたり平均3000円ぐらいから、高額なものでは4枚で16万8千円という異常価格で売買され始めました。3月に比べるとその数は倍以上です。

 こうした事態に、LAWSON側は店舗を守るため、これ以上の発券はできないという苦渋の決断を行ない、その旨を博覧会協会に伝えました。博覧会協会としても、残念ながらハガキによる申込みと抽選という予約システムへの変更を余儀なくされたのです。


8.なにが原因だったのか

 なぜこのような事態になったのか、原因は正直なところ未だによく判っていません。

 万博が期間限定であること、「サツキとメイの家」が万博の目玉パビリオンになっていること、1日の入場者数が800人しかないこと、そして「となりのトトロ」が大変な人気があること、等々。原因はいろいろと推測されますが、そのいずれも決定的な原因とはいえません。ただ、これほどまでに人気が過熱するとは予想できなかった、ジブリ側の認識の甘さがあったことは認めざるを得ません。到底「三鷹の森ジブリ美術館」とは同じ予約方法では対応できないことを予想すべきでした。

 これについては、本当にジブリ側の落ち度であり、ご迷惑をおかけした、ファンの皆さん、関係者の方々、そして困難を排して我々の提案を取り入れてくださった博覧会協会に対して、繰り返しお詫び申し上げます。


9.最後に

 前述のとおり、この問題に対する対策として予約方法の変更が今後行われますが、それとは別に、「サツキとメイの家」について、現在ジブリができることとして考えていることがあります。それは、「サツキとメイの家」を新しくもう一軒建てて、万博終了後もなんとか皆さんに見ていただける機会をつくれないかということです。

 場所や時期は検討中ですが、期間限定ではなく恒久的にみなさんに見ていただこうという考えで、予約方法なども慎重に検討する考えです。詳細は、もうしばらくお待ちください。

 もう一つ、「Yahoo!オークション」について、この場を借りて一言いわせていただきたいと思います。今回の騒動の一因としては間違いなく「Yahoo!オークション」の存在があると思います。チケットゲッターの登場や、「とりあえず取ってみて、取れたら売ろう」という考えの参加者が予約券人気に拍車をかけているのは事実だと思います。本当に見たい人に見てもらおうと、出来る限り利便性の良い、無料で予約券を配布する方法について、一生懸命検討してきた私たちや博覧会協会の関係者の思いも、一部の心無い人たちの行為で踏みにじられたことは、誠につらいものがあります。願わくば、5月入場の「Yahoo!オークション」にアップされている予約券がこれ以上一枚も売れないことを祈ります。このことに関しては、みなさんの、ご協力をお願いしたく思います。

 最後に、もう一度、予約券のために並んだり電話をかけてくださったファンの皆さま、今回の予約券の件でご迷惑をおかけした、博覧会協会の皆さま、LAWSONの皆さま、店舗の皆さま、報道各社の皆さまに、もう一度、お詫びを述べさせていただきます。本当に、ご迷惑をおかけいたしました。申し訳ございませんでした。


2005.4.15
スタジオジブリ 鈴木敏夫