「野中くん発 ジブリだより」 10月号

 既報の通り、9月6日(金)の記者会見で、宮崎駿監督が正式に映画制作からの引退を発表しました。その時の模様は「公式引退の辞」と共に今月号に掲載されるそうなので、そちらをご覧下さい。

 この件については、社内には8月5日(月)のジブリ連絡ミーティングの場で先に発表がありました。ジブリ連絡ミーティングというのは、毎月1回行われている、ジブリ美術館を含めたすべてのジブリ各部門を対象とした連絡会議で、各部署の長らが集まり、鈴木さんから、ジブリで先月あったこと、現状、今後の説明を受ける会議です。そこで聞いたことを参加者は自分の部署に持ち帰り、報告します。この会議は私がジブリに入った頃にはすでに実施されていたので、20年は続いていると思われますが、普段は宮崎さんは出席しません。しかし8月5日は宮崎さん本人が出て、自ら社内の主だったメンバーに引退を説明しました。その時は皆、やはりショックを受けたと思います。でも、宮崎さんと一緒のフロアーで「風立ちぬ」の仕事をしてきた作画スタッフからは、宮崎さんが話を終え退出した後に、今回は本当に2年間よく最後までもったと思った、途中、もしや倒れるのではと心配になることもあった、という声も聞かれました。昔の2日間が今は1週間、そういう恐怖を現実に味わったと宮崎さんはこの時言っていました。「風立ちぬ」を観た方からは、本当に瑞々しいいい作品だった、宮崎監督の次回作も期待したい、という感想を何度も聞きました。とても有難いことですが、しかし、本人には、限界に来ているというはっきりした実感があり、今回の発表に至りました。映画制作は引退ですが、まだ10年は色々やっていきたいとのこと。まずはお疲れ様でした、と申し上げると共に、これから宮崎さんは何をやっていくのだろう、と、立場を離れて興味津々です。

 さて、その「風立ちぬ」ですがお陰様で大ヒット、この号が出る頃もまだまだ上映中と思います。未見の方はどうか劇場でご覧下さい。そしてジブリが制作中の今年のもう1本、高畑勲監督の「かぐや姫の物語」は、11月23日(土・祝)公開を目指してまさに最後の追い込みの真っ最中です。先日、キャストも発表になり、新しい予告編も上映が始まりますが、本当にすごい作品が生まれようとしています。社内のラッシュ試写を見るたびに、恐るべきクオリティの高さと溢れる情感に感嘆の連続です。どうかご期待下さい。