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2006年11月 1日

「テルーの唄」の歌詞の表記の問題について

 スタジオジブリの鈴木です。
 今回、一部で報道されている「テルーの唄」の歌詞の表記の問題について、この場を借りてご説明させていただきます。

 今月、雑誌「諸君!」に寄稿された荒川氏の原稿を発端とした映画「ゲド戦記」の挿入歌「テルーの唄」の歌詞と萩原朔太郎氏の「こころ」という詩の関係についての問題は、私の配慮の足りなさから来たもので、関係者の皆さまに無用なご心配をかけ、気分を害させてしまったことに対して、心よりお詫び申し上げたく思います。
 「テルーの唄」の作詞に際して、宮崎吾朗監督に萩原朔太郎の詩「こころ」を参考にさせたことを隠蔽するつもりは毛頭ございませんでしたが、荒川氏のご指摘のとおり、このままでは将来的にその事実が忘れ去られてしまうおそれがあることまでは考えが至らなかったことは事実です。そのことは私の判断が間違っていたと認めざるを得ません。
 今後は、「テルーの唄」露出の際は、必ず萩原朔太郎の「こころ」から着想を得たことを明記し、萩原朔太郎氏への尊敬の念を顕にする様、心がける所存でございます。

 つきましては蛇足かも知れませんが、この間の経緯についてこの場で改めてご説明させていただきます。
 まず、この歌詞が出来るまでの経緯については、劇場で販売されているパンフレットに一文が掲載されていますので、その部分を以下転載させていただきます。


~「テルーの唄」の誕生~

 映画「ゲド戦記」の制作準備が始まってまだ間もないある日、鈴木敏夫プロデューサーはヤマハ音楽振興会の秋吉圭介から、1本のデモテープを手渡されました。歌っているのは、手嶌葵という18歳の女の子。一曲目は、偶然にも、鈴木がこれまでの人生で最もよく聴いた曲という「ローズ」(The Rose)。一聴、すばらしい声でした。純粋で、せつなくて、どこかなつかしい。ヒロイン・テルーの気持ちにぴったりだと直感しました。そして、聴きながら、学生のころ覚えた萩原朔太郎の「こころ」という詩を、何十年ぶりかに思い浮かべました。

  「こころをばなににたとへん
   こころはあぢさゐの花
   ももいろに咲く日はあれど
   うすむらさきの思ひ出ばかりはせんなくて……」

 鈴木はすぐさま吾朗監督を呼び、この曲を聴かせました。以心伝心、吾朗監督もそれを聴きながら、テルーのことを思います。聴き終えた後、鈴木は吾朗監督に「ゲド戦記」のテーマソングの作詞を依頼しました。とまどう吾朗監督。そこで鈴木は、「こころ」を暗唱してみせます。そしてなんと、その翌日、「こころ」に着想を得た吾朗監督は「テルーの唄」の詞を完成させたのです。さらに、その10日後には、谷山浩子の曲にのせて手嶌葵の歌う「テルーの唄」がジブリに届けられました。
 こうして運命に導かれるように「テルーの唄」は完成し、その歌はテルーのキャラクター像、さらには物語全体に大きな影響をおよぼすことになりました。
                        (「ゲド戦記」劇場パンフレットより)


 経緯については、以上の文で述べていることが全てであり、それ以上の事実はございません。
 こうした経緯で出来上がった以上、私は、「テルーの唄」を公表するに際して、この萩原朔太郎の詩「こころ」の存在は、何らかの形で世間に伝え明確にしてゆく必要があると思いました。そこでその方法について、専門家や関係各位と相談した結果、この詞が萩原朔太郎の詩「こころ」に着想を得て作られたものであることを、機会あるごとに表明していくことが最善であろうという結論に達したのです。その判断に基づいて、前記の劇場パンフレットもそうですが、映画の公式ホームページでは「こころ」を並べて全文掲載して経緯を説明しましたし、吾朗監督や私の色々なインタビューや取材で「テルーの唄」の話題になるたびに、朔太郎の詩「こころ」を参考にしたことをきちんと説明するように努めてまいりました。
 ただ今となっては、その判断が甚だ思慮不足であったことを思い知った次第です。そこで今後は、「テルーの唄」露出の際は、“この曲の歌詞は、萩原朔太郎の詩「こころ」に着想を得て作詞されました”という表記を必ず併記するように、ジブリが関与している場合だけでなく第三者に対しても可能な限り要請していきたいと思っています。

 重ねて申し上げますが、今回の表記問題につきまして、混乱を招いた原因はスタジオジブリと私にあり、ご迷惑をお掛けいたしました関係者の皆さまには、心よりお詫び申し上げます。加えて、今回の指摘を行なっていただいた、荒川洋治氏と文藝春秋社「諸君!」編集部の皆さまには、改めてこの場を借りて御礼申し上げる所存です。

                         映画「ゲド戦記」プロデューサー
                                      鈴木敏夫
2006年10月24日