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2006年2月28日

第四十三回 「新古典主義」宣言

前回、映画『ゲド戦記』の目標のひとつとして、
「シンプルな絵で、アニメーション本来の魅力を取り戻したい」
と書きました。

しかし、この「シンプル」という言葉は、
なかなか正確なニュアンスを伝えるのが難しく、
下手をすれば、手抜きではないのかとか、
今の時代に通用するのか、という心配もあります。
単純な先祖返りといったイメージを持たれかねませんし、
実は、制作に入った当初は、
スタッフからも、そのような疑問の声が上がりました。

そこで私は、「新古典主義」という言葉を使い始めました。
辞書で「新古典主義」を引くと、

18世紀中頃から19世紀前半にかけてバロックとロココ美術に対する反動として西欧全体に起こった美術運動。古代ギリシア・ローマへの回帰を基調とし、単に『古典主義』ともいう (広辞苑)

とあります。
つまり、派手で装飾的になってきた美術に、
もう一度、簡素で力強い荘厳さ復活させよう、
それが新古典主義の理念です。

『太陽の王子 ホルスの大冒険』から38年、
『風の谷のナウシカ』からも22年、
これまで日本のアニメーションは発展し、洗練されてきました。
しかし、その発展や洗練の結果として、
バロックやロココ美術が美術史の中で占める位置のように、
あまりに装飾的になり、
その分、力強さを失ってきているように見えます。

もう一度『ホルス』や『ナウシカ』を範にとって、
単にその模倣ではなく、現在の自分たちが持っているもので、
あの力強さを取り戻すには、どうすればいいのか?
それが、私の考える新古典主義の目指すテーマなのです。