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2006年3月 8日

第四十九回 竜と少年とシュナ

映画『ゲド戦記』の企画では、
ストーリーとキャラクターや背景美術といった絵柄を
平行して考えてはいましたが、
どちらかといえば、ストーリーの作成を先行させていました。

最初の1年は、原作を読み込み、関連資料を集めつつ、
それをもとにプロット(筋書)を書いてはボツにする
という作業を延々と繰り返していました。

ある時、その試行錯誤ぶりを見かねた鈴木プロデューサーから、
「まず、この作品を象徴する絵を描いてみてはどうか?」
というアドバイスを受けました。

そうして描かれたうちの一枚が、少年と竜が向き合っている、
現在公開されている第一弾ポスターの元になる絵でした。

さらにそれと前後して、
「宮崎駿監督が、『ゲド戦記』をやるくらいなら、
『シュナの旅』をやればいいんだ」
と言っていると、人づてに聞きました。
『シュナの旅』とは、1982年に宮崎駿が
アニメージュ文庫のために描き下ろした絵物語です。
実は、『シュナの旅』も
『ゲド戦記』から大きな影響を受けていました。

少年と竜の絵と「シュナの旅」というキーワードによって、
それまでいっこうに形をなさなかった膨大な積み重ねが、
一気に、ある方向を目指して形になっていきました。
そして、たちまちの内に、
1枚のプロットが書き上がりました。
それが、ひとりの少年が国を出て旅をし、偉大な魔法使い、
そして少女と出会うことで変わっていくという、
現在のストーリーの原型になるプロットだったのです。
それは昨年5月のことでした。

ここにいたって、
ようやく私は映画『ゲド戦記』の方向性を手に入れ、
「作品として成立させることができる」という確信を持ったのです。