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「ゲド戦記」制作日誌

2005年12月30日

原点に立ち返ろう

 今日は、作画机を増やすため、制作部総出で2階作画部の一部をレイアウト変更。年明けから追い込みにかけて、社内に入ってくださる外注スタッフの作画机を、6脚増やしました。
 
 
20051230_desk.jpg
『新たに加わった作画机。外注スタッフの皆さん、お待ちしています!』
 
 
 今日は、数ヶ月ぶりに、ゆったりとした一日でした。
 年の暮れは、来し方行く末に思いをはせ、新たな気持ちで新年を迎えたいもの。お昼過ぎに、鈴木プロデューサーと話した事を、書いてみたいと思います。


 「監督日誌」でも触れられているように、鈴木プロデューサーは、映画制作と、代表取締役大賢人(笑)の二足のわらじを履き、還暦をあと3年に控えて益々多忙。

 そんな鈴木プロデューサーは毎年、お正月休みを、仕事部屋の整理にあてています。「仕事の八割は整理」と、机にたまった書類を整理してこの一年を振り返り、新たな年に備えるのです。

 今日はその合間に、久しぶりにゆっくり話そうという事になったのでした。


 雑談のテーマが、「画や文章の書き方」に及んだとき、
 
 「無から生じる画や文章は無いよ」

 との発言。

 僕らはとかく、目を瞠るような絵画や、眉間を開かされるような文章が、無から生じた、ある種閃きの産物であるような錯覚を起こします。
 でも、鈴木プロデューサーはこう言います。


 「例えば宮さん(宮崎駿監督)は、画を描いている時に行き詰まると、スタジオを歩き回ったり、散歩に出かける。スタッフの表情を観察したり、屋上から眺める夕陽を眺めたりして、これから描こうとする画に必要な情報を手に入れようとする。人間は、自分の目で見たもの以外は描けない。その事が解っているから、あらゆるものを観察して頭に入れておく。そして、新たな気持ちで机に向かう。これが凄いところだよ」


 鈴木プロデューサーも、かつては記者として日々記事を書き、映画制作に関わるようになった今でも、膨大な文章を書きます。
 曰く、「コツは、書けなくなったら必ず原点に戻ること」。常に、自分が今書くべき事は何なのかに立ち返り、実際の対象物(テーマ)を観察する。その繰り返し。

 観察→書く→観察→書く→観察→書く

 年齢を重ねてゆくと、物事を見る感受性が、だんだん無くなってゆく。そんな中で、どれだけ自分をみずみずしい、新鮮な状態に持っていくか。その為には、あらゆる課題の原点に立ち返る事が大事なんだよ、と。


 ちょっと内輪なお話ですが、2005年の年の瀬に、こんな話をしたことは、僕にとってとても大きな事でした。「ゲド戦記」の企画が動き始めた時のことを思い出し、今の自分が果たしてその新鮮さを保っているかと、自問自答した次第です。
 
 
 ちなみに、来年のスタジオジブリ制作部の抱負は、「平常心」。
 過酷な追い込みでも、みんなで常に冷静を保とうという、渡辺リーダーの訓辞と共に、今夜は制作部一同で、ささやかな打ち上げを催したのでした。