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2006年2月27日

第四十二回 シンプルな絵で、力強いアニメーションを

2月25日から、
全国の劇場で『ゲド戦記』の予告篇がかかり始めました。

それを観た人は、
そこで流れる歌の、素朴な優しさに打たれると同時に、
キャラクターの絵柄、背景美術をはじめ、
全体の雰囲気が「いつものジブリ」であることに
驚かれるかもしれません。
しかし、これらは最初から決まっていたわけではありません。
さまざまな試行錯誤を経て、このような形になったのです。

この『ゲド戦記』という企画は、
当初から、私が監督をやると決まっていたわけではありません。

最初はアドバイザー的な立場にいた私は、絵柄については、
漠然と「今のアニメーションは、キャラクターにしても、
美術にしても、緻密になりすぎているのではないか?
もう少しシンプルで力強い絵の方がアニメーション本来の魅力を
発揮できるのではないか?」
そんなふうに思っていました。

さらに、
原作『ゲド戦記』では、
「言葉」がとても重要な位置を占めています。
原作の良さを生かすためには、映画においても、
登場人物たちが語る「言葉」を大切にしなければなりません。
だったらなおさら、絵をシンプルにした方がよいのではないか。
それによって、言葉がより力強く伝わるのではないか、
そう考えたのです。

たとえば、『太陽の王子 ホルスの大冒険』は40年近く前の作品で、
今観ればシンプルなのですが、その分力強く、
現在のアニメーションと比べて、
キャラクター、美術に何の遜色もありません。
単純に昔に戻ればいいということではありませんが、
絵がシンプルだからといって、リアリティが失われるかというと、
決してそんなことはないはずです。

シンプルな絵で、
アニメーション本来の魅力を取り戻したい。
それが、まず私が考えていたことです。