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2006年2月10日

第三十五回 路地の湿っぽさを描く

おとといの夜、
男鹿和雄さんが美術ボードを持ってきてくれました。

男鹿さんは、映画「となりのトトロ」の美術監督で参加したのを皮切りに、
以後ほとんどのジブリ作品で美術監督・背景美術を手がけている
この世界の第一人者です。

そのとき持ってきていただいたのは、夕焼けに染まった草原のシーン。
空の抜けた感じといい、雲のやわらかさといい、草の色合いといい
思わず息を飲む美しさでした。

アニメの背景美術では、
その人の出身地によって空の色が変わると言います。

アニメーターもそうですが、背景美術も、
絵を描くとき、実際に自分の目で見たものがベースになります。
秋田県出身の男鹿さんと、
フィラデルフィアで生まれ、
目黒川のほとりで育った武重さん(美術監督)では、
その原風景が違うのです。

たとえば、武重さんの描いた猥雑な町の路地裏は、
まるで、その湿っぽさまで匂ってきそうです。

逆に、写真集やテレビで見ただけでは、
いい絵はなかなか描けないという気がします。

草っぱらの中に身を置いて、初めて、
草のやわらかさ、草いきれの爽やかさがわかります。

そしてその感覚は、おのずと絵に映し出されるのです。