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2006年2月 7日

第三十二回 ル=グウィンさんの息子

先日、『ゲド戦記』の原作者ル=グウィンさんの息子である
テオさんがジブリにやってきました。
テオさんは、ル=グウィンさん側の窓口となって、
いろいろと対応してくれている方です。

テオさんには、2月25日から劇場で上映される
約3分の予告篇を見てもらいました。

テオさんの感想は、
「とても美しい映像だ。歌からも、ハリウッド的ではなく、
とてもジブリらしいものを感じる」とのことでした。
とてもよい印象を持っていただいたようです。

もちろん、
劇場に足を運んでくれた観客の方々に喜んでもらう、
これが、私たちが映画を作る上での第一の目標です。

一方で、今回のように原作がある場合、
原作者が自分たちの作ったものを好意的に受け止めてくれるかどうか
ということも、とても気になるところです。

前にも書きましたが、
私がいまこうしてアニメーション映画の監督をしているのも、
原作『ゲド戦記』の魅力に惹かれたがゆえです。
だからこそ、ル=グウィンさんが『ゲド戦記』で描こうとした
大事な部分を大切にしたいと思っています。
そこをいい加減にあつかったのでは、元も子もありませんから。

しかし当然ながら、活字と映像という表現手段が違う以上、
文学をそのまま映画にすることはできません。
原作の活字を正確になぞって映像化すれば、
『ゲド戦記』の本質的な部分を表現できるというわけではないのです。

原作『ゲド戦記』の大切な部分を、
映像として表現するにはどうすればいいのか。
これは、この映画を作り始めた当初から今に至るまで、
ずっと私の頭にある問題です。

久しぶりにテオさんに会って、
原作『ゲド戦記』の名に恥じぬものを作らなければと、
あらためて、気持ちを新たにした次第です。