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2006年1月17日

第十九回 魔法のような「魔法」

昨日、鈴木プロデューサーが予告編を作るために、
あらためてライカリールを観た後、
「この映画は、年寄りに冷たすぎるんじゃないか」と
冗談めかして言っていました。

確かに映画では、中年を越えた魔法使いであるゲドは、
主人公の少年と旅をするのですが、最高の魔法使いでありながら、
その魔法の力を使って敵をバッタバッタとなぎ倒す大活躍……
をするわけではありません。

手から光線を出したり、空を飛び回ったり、
呪文を唱えて怪物を呼び出したりもしません。

物語の舞台アースシーにおける魔法とは、
物の本質を知ることによって、それに働きかけることです。
それは、自然や人間への深い理解や共感から成り立っています。
だから、たとえ悪を倒すためであっても、
私は魔法を暴力の装置にしたくありませんでした。

それは、ファンタジーを描くための単なる小道具ではなく、
いまこうして生きている私たち世界に働いているいろいろな力を、
まざまざと目に見えるものにしてくれるための「魔法」。
そんな魔法のような仕掛けが、
『ゲド戦記』における「魔法」なのです。