米林宏昌監督作品『思い出のマーニー』

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企画意図

今から2年前、鈴木さんから一冊の本を手渡されました。
「思い出のマーニー」
宮崎さんも推薦しているイギリス児童文学の古典的名作です。
鈴木さんはこれを映画にしてみないかと言いました。

読んでみて思ったのは“映画にするのは難しそうだな”ということでした。
文学作品としてはとても面白く読んだし、感動しました。
ただ、アニメーションとして描くのは難しい内容でした。
物語の醍醐味はアンナとマーニーの会話です。
その会話によって、ふたりの心に微妙な変化が生じていきます。
そこが何より面白いのですが、どうやってアニメーションとして描けばいいのか。
少なくとも僕には面白く描ける自信がありませんでした。

でも、原作を読んでからずっと頭に残るイメージがありました。
美しい湿地に面した石造りの屋敷の裏庭で、
手を取りあって寄りそっているアンナとマーニー。
月光に照らされながらワルツを踊ってもいいかもしれない。
ふたりの気持ちが繋がるその傍らにはいつも、
美しい自然と、心地良い風と、昔馴染みの音楽があります。
僕はイメージ画を何枚か描いているうちに、
この映画に挑戦してみたいと思うようになりました。

物語の舞台は北海道です。
12才の小さな身体に大きな苦しみを抱えて生きる杏奈。
その杏奈の前に現れる、悲しみを抱えた謎の少女マーニー。
大人の社会のことばかりが取り沙汰される現代で、
置き去りにされた少女たちの魂を救える映画を作れるか。

僕は宮崎さんのように、この映画一本で世界を変えようなんて思ってはいません。
ただ、『風立ちぬ』『かぐや姫の物語』の両巨匠の後に、
もう一度、子どものためのスタジオジブリ作品を作りたい。
この映画を観に来てくれる「杏奈」や「マーニー」の横に座り、
そっと寄りそうような映画を、僕は作りたいと思っています。




脚本・監督 米林宏昌


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