制作日誌 1998年9月

98.9.1(火)
・新人募集の締め切り日。朝から書類が山のように来る。動画だけで200通は越えそう。
・山田氏シーン9-6 打ち合わせ。
・メインスタッフコーナーで作業をしていた美術の田中直哉氏が三階の美術ルームに移動。
・稲城氏と川端氏が新しく買ったアンプを会議室に設置しようとするも、AV製品が増えすぎて配線がなかなかうまく行かず。作業に総計6時間ほどかかってしまう。
・仕上げINを控えた打ち合わせが行われる。今まで行われたテストを元に保田さんから、こうしたほうがよいのではないかという意見がいくつか出される。

98.9.2(水)
・資料用にNHK「みんなのうた」のベストCDを購入。懐かしい歌が満載。
・制作管理部門の一次選考が行われる。なるべく多くの人を面接することで意見が一致、8人を面接することに。
・百瀬さんがボブスレー篇の絵コンテを若干改定。

98.9.3(木)
・マック版急速演技記録計のさら成るバージョンアップを計るため、開発の人と話し合い。なかなかこちらの要望である音関係で改定を加えるのは難しそう。
・高橋、米沢、美術二人と来年度の美術新人研修の採用、研修の基本姿勢を話し合う。また日程その他の詳細も決定。

98.9.4(金)
・午後一より来年度の動画研修生の一次選考が行われる。200以上の応募書類から実技面接を受ける15人が決定する。
・音楽打ち合わせが行われる。

98.9.5(土)
・編集の瀬山さん来社、「となりの山田くん」の編集作業の方針打ち合わせ。アビッドとフィルム編集をどう絡ませていくのか、等が話し合われる。
・3時から新人達を中心とした防災訓練会議が行われる。今年はどんな訓練になるのか今から楽しみなところ。
・宮崎監督の豚屋にて小金井村塾2がスタート。終了後久しぶりに若者と話して興奮したのか宮崎監督がジブリに乱入、1時頃まで制作部のあたりでいろんな人と話し込んでいた。

98.9.7(月)
・第一回の英語教室が開かれる。先生は制作業務の井筒さん。今日は制作、出版部を中心とした7人程が生徒として参加し、授業を受けるも、日頃の不勉強がたたり、恥を曝すもの多数。一橋出の高橋さんも見学と称して乱入するも、私らと五十歩百歩。
・制作部中途採用の面接が開始される。

98.9.8(火)
・午後4時よりバーにて今まで出来上がった作画部分、絵コンテも混じえプレスコ部分の声も入れ、約50分程に編集したものをプロジェクターで上映する。スタッフ全員が見たため、ぎゅうぎゅう詰めとなったが、内容が面白く集中して見られたため、文句も出ず。

98.9.9(水)
・4℃の田中栄子さん来社。ついでに今そこで働いている、先日「アメリカ横断ウルトラクイズ」の予選に出て、あえなく敗退した有富君も来社。今度はゲームのオープニング演出に挑戦するらしい。
・夜に宮崎監督が来社し「部屋が汚い。きれいにしろ」と社内中を廻る。1階女子トイレ前に原画整理用のハコを置いておいた望月氏は「片付けろ 株主より」という貼紙を名指しで張られていた。
・2時半頃から会議室にて部次長会議が行われる。議題は今後の「となりの山田くん」の制作の進め方。

98.9.10(木)
・朝から全社員を対象に歯科検診が行われる。
・メインスタッフコーナーの席替え&模様替えを計画。具体的には、動画チェックに入る予定の小野田、中村両氏の席をメインスタッフコーナーに作り、机の位置を変えて出口を二つにする予定。因みに後者のアイディアは、宮崎監督が「出口が一カ所だけでは空気が淀み、何かとスピードが遅くなる」との意見を受けてのもの。
・第七回○○塾が行われる。

98.9.11(金)
・高畑監督が昨日深夜、改定脚本を最後まで書き終える。朝一よりプリントアウト。
・制作部の面接3人を行う。
・メインスタッフの配置替えが行われる。ついでにゴミを捨てまくったところ、見違えるほどきれいになる。

98.9.12(土)
・引き続き制作部の面接が行われる。
・来週から高畑、田辺両氏による絵コンテ合宿が再び行われることに。
・高畑監督からシナリオ改定最終縞を渡される。

98.9.14(月)
・高畑監督、門屋さんと都内の某所まで合宿用の荷物を運ぶ。大渋滞でかなり時間がかかる。なかなか風情のある旅館。
・第二回の英語塾が開かれる。

98.9.16(水)
・来年度の新人研修生仕上部門と美術部門の締め切り。昨年に較べると募集時期を速めたせいか、約1.5倍程度の応募がある。朝一から制作総出で応募書類のコピー取り。
・今年の7月に整理半ばにして中断していた、倉庫に保管してある過去のジブリ作品の原画整理を、望月氏が中心となり、今日明日と会議室を貸し切って行われる。

98.9.17(木)
・夜遅くに神村氏とともに、会社に来ていた高畑監督を車に乗せて、合宿所に向かう。着々と絵コンテは進行中なのだが、何故か田辺氏が蚤、ダニの襲来を受け、体のあちこちに刺された後がある。おまけに今日は旅館の犬にまで噛まれてしまったらしい。まさに体を張った絵コンテ作業!

98.9.18(金)
・作画一次の書類審査に合格したイタリア人が来社。ビザの関係で本来の実技試験前にイタリアに帰ってしまうため、急遽来てもらったもの。
・美術の書類審査が行われる。今年は180名を超える過去最高の応募者を記録。厳正な審査の結果、12名が一次合格。

98.9.19(土)
・来週末にジブリ2階の改装工事が予定されているが、それに向けて制作部の大掃除が行われる。今日は豚屋で村塾が行われるため、宮崎監督が必ずや粛正に現れるに違いない、との噂が制作部に拡がり、汚いもの、いらないものを捨てまくる。結果見違えるほどきれいに広くなり、何時来ても良い状態になったが、こんな時に限って宮崎監督は現れず。

98.9.21(月)
・朝から田辺、高畑両氏が合宿所からジブリに出勤。どうしても流さなければいけないCUTのチェックを行う。夜までチェックをこなした後、田辺氏は嵐の中再び合宿所へ。
・動画机をきれいに塗り替える構想を実現すべく、試し塗りに出していた机が帰ってくるも「色が濃すぎてあたりが暗くなる」と不評。再度試し塗りに。

98.9.22(火)
・仕上部門の書類選考が行われる。一次審査通過者15名が決定。
・夕方高畑監督が、台風が小康状態になったのを見計らって、コンビニに買い物に行こうと外に出る。ところがそのとたん急に風雨が強くなり、傘を持っていたにもかかわらず、ほんの5分程度のコンビニ往復で、全身ぐしょ濡れ。美術からドライヤーを借りてきてズボンを乾かしていた。

98.9.24(木)
・塗りなおしになっていた机が上がってくるも、再び不評。どうなる机問題。
・MITにて荒木さんと益岡さんの追加声入れが行われる。

98.9.25(金)
・来月中旬に行われる仕上げ第二次選考に向け、問題を作成中であるが、保田さんもどの様なテストを行えば、良い人材を獲得できるか計りかねているため、仕上部のメンバーを実験台に様々なテストを繰り広げている。

98.9.26(土)
・明日、明後日の二日間をかけて、二階のフロアーの脂等で茶色くなった壁と天井を、新築当時の色に塗り替える作業が行われる。ついでにメインスタッフ横にあった小部屋をとっぱらう等、若干の配置替えを行う予定。夕方から、塗り替え作業をしやすくするため、各人の荷物を一人段ボール1コにまとめ、バーに集める。

98.9.29(火)
・壁と天井をきれいに塗り替えるも劇的には雰囲気は変わらず(元と同じ色なんだから当たり前か)。
・朝から片付けた荷物の整理でてんやわんやの大騒ぎ。高畑監督が出社してきてもメインスタッフ周辺が大混乱の為、仕事にならず。
・七時からイマジカにてメインスタッフによる色のテストラッシュを行う。取り合えずハード的な面では最良な状態になっているはず。その後、ラッシュをジブリに持ち込み、再び上映。

98.9.30(水)
・今日も朝から昨日の片付けの後始末で大騒ぎ。計画では広くするはずのアビッド周辺のスペースが狭くなっていたりと、計画の伝達が上手く行なわれていない。
・深夜宮崎監督が来社し、私の机を見て「仕事に関係の無いクラシックの本を家に持って帰れ」と怒っていたらしい。何処かに隠さねば。

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