「ポニョはこうして生まれた。」発売延期についてのお詫び

 7月3日(金)に発売を予定していたDVDとブルーレイディスク「ポニョはこうして生まれた。」、およびこのドキュメンタリーを含むDVD「崖の上のポニョ 特別保存版」は、誠に申し訳ありませんが、製作上の問題が判明したために、発売を12月に延期させていただきます。このDVDを楽しみにされていたお客様、ならびに販売店の皆様に対しては、深くお詫び申し上げます。

 製作上の問題というのは、音楽の原盤権の処理を行なっていなかったという問題です。具体的に申し上げますと、「ポニョはこうして生まれた。」の中には宮崎駿監督がCDで音楽を聴きながら作業している様子が写されているシーンが数多くあります。ドキュメンタリー作品の場合、現場で録音されたこうしたCDなどの音楽に関しても、パッケージソフトとして販売する場合には音楽の権利者(原盤権の権利保持者)から使用の許諾を得なければなりません。この権利の使用許諾を行なっていなかったのです。この事実を僕が知ったのは発売の10日前、6月24日(水)でした。

 当初、問題になった曲はワーグナーの楽劇「ワルキューレ」(カール・ベーム指揮バイロイト祝祭管弦楽団)1曲でした。この時点では、1曲だけであれば対応の可能性があると許諾手続きに奔走しました。そして、2週間程度の発売延期も検討しました。しかし、29日(月)になって他にも使用許諾を必要とする音楽が多数あることが判明し、12時間半の本編映像の徹底的な洗い出しが必要なことがわかったのです。

 さらに、許諾が必要な音楽の中には多数の海外のCDが含まれていました。一般的に国内のレコード会社が権利を持つ音楽に比べて、海外のレコード会社の場合は許諾を得るのに時間がかかります。最低1ヶ月から3ヶ月。許諾を得られないケースも考えられます。そうなるとその音楽が映像と一緒に録音されているシーンは削除するなどの編集をやり直し、さらにはDVDの製品そのものを作り直す必要がある可能性もあります。

 この事実が明らかになった時点で、改めて慎重に作業をやりなおすためには、5ヶ月間という大幅な発売延期が必要だと決定せざるを得ませんでした。すでに発送済みの商品も一旦すべて回収しました。

 このような、映像製作者にあるまじき初歩的なミスが起きた原因は、製作者である私たちと実際のソフト制作を委託したNHKエンタープライズとの間で、音楽の権利処理の責任の所在を曖昧にしてしまったことにあります。

 この作品は、いろんな人の大きな協力があって、やっと、完成にこぎ着けたドキュメンタリーでした。僕自身、実作業に深く関わり、基本的な構成案、ナレーションのチェック、聞き取りにくい宮崎駿の言語の解読など、本当に頑張った作品でした。他の誰よりも残念で、口惜しいのですが、いろんな人にご迷惑を掛けたことは紛れもない事実です。この場をお借りして、責任者として改めてお詫び申し上げます。

 しかし、5ヶ月間、待って下さい。必ず、皆さんに満足いただけるように、また、発売を楽しみにしていたお客様とDVD販売各社の皆様にお手元に届けるべく頑張りますので、よろしくお願い致します。


2009年7月2日

スタジオジブリ プロデューサー
鈴木敏夫