「野中くん発 ジブリだより」2019年6月号

 7月2日(火)から、東京国立近代美術館でいよいよ「高畑勲展─日本のアニメーションに遺したもの」が始まります。高畑監督についてのまとまった展覧会は今回が初めてです。

 この展覧会は、昨年高畑監督が亡くなったから企画されたわけではありません。監督の生前から企画は動き始めていて、監督自身が開催を了承していました。残念ながら本人がそれを観ることはかないませんが、とても内容の充実したものになりそうです。
 
 高畑監督は、自身が関わってきた作品の制作資料を沢山保存していました。今回、それらの資料がフル活用されるそうで、たとえば、監督の制作ノートや、東映動画の初期長編の絵コンテなど、未公表だった貴重な資料が多数展示されます。さらに、監督の指示を受けて各スタッフが実際に描いた、レイアウトや原画、背景美術などの各作品の色々な制作素材もふんだんに展示されます。高畑監督自身は絵を描く人ではありませんでしたが、それらの展示によって、高畑監督が、アニメーションの演出をどのように行ってきたかを明らかにするのがこの展覧会の狙いの1つです。
 
 展覧会のサブタイトルは「日本のアニメーションに遺したもの」となっていますが、これは、高畑監督が日本のアニメーションに大きな影響を与えてきたことから来ていると思います。いや、日本だけでなく世界のアニメーションの在り方を変えたと言っていいのではないでしょうか。それは、前述の演出法ももちろんですが、それだけでなく、幅広い多様なテーマ、映像表現の革新性など、多岐に亘っています。この展覧会は、それらを総合的に見せてくれるものになるはずです。
 
 スタジオジブリは企画協力として関わっていますが、高畑さんが在籍してきた色んなアニメーション制作会社にも皆協力していただいており、過去半世紀以上の、日本のアニメーションの歴史も感じさせてくれる展覧会になると思います。主催は東京国立近代美術館、NHK、NHKプロモーション。すでに前売券は発売中ですのでぜひどうぞ。なお、高畑監督の地元である岡山にも巡回予定です。
 
 さて、各地を好評裏に巡回してきた「近藤喜文展」が7月6日(土)から三重県総合博物館で始まります。ここが最後の開催地となりますので、中部地方、近畿地方の方はどうぞ宜しく。