「野中くん発 ジブリだより」6月号

 東京都現代美術館の今夏の企画展は、「館長 庵野秀明 特撮博物館 ミニチュアで見る昭和平成の技」です。つまり特撮の展覧会。「エヴァンゲリオン」等でおなじみの庵野秀明監督が館長となり、現代美術館の中に特撮の博物館をこしらえてしまおうという企画です。ジブリは今回も企画制作協力で参加します。

 そもそもは、今から2年以上前に、庵野監督が鈴木敏夫プロデューサーに〝特撮の博物館を作れないだろうか〞と相談したことが始まりです。庵野監督は以前から鈴木プロデューサーと懇意でしたし、ジブリはジブリ美術館の実績がありますので、それでそういう相談をしたわけです。なぜ特撮か、については今さら説明の必要もないでしょう。庵野監督は大の特撮ファンであり、様々な特撮作品とアニメーション作品を観て育ってきた人です。作品にも過去の特撮物の影響は明らか。しかし、CGの発展のせいで、昔ながらのミニチュアを中心とした特撮は今、顧みられなくなっており、撮影に使った色々な素材も散逸の危機にあります。庵野監督は、特撮に関する貴重な文化遺産を保存するには今が最後のチャンスではないか、と危機感を募らせました。相談を受けた鈴木プロデューサーは〝それならまず特撮の展示会をやろう〞と提案しました。いきなり実際の博物館を作るのは大変だ、まず展示会をやることで現状が把握できる、そしてその実績が博物館へのステップになる、と考えたからです。

 そうなると、展示会を夏の現代美術館で行うのは自然な流れでした。毎夏、ジブリは現代美術館と日本テレビが主催するアニメーションに関連した展示会に関わってきていますので。こうして今回の企画展「特撮博物館」が実現の運びとなりました。

 日本の特撮には長い歴史があり、その全体像についても展示では触れますが、何せ「館長 庵野秀明」なので、庵野監督がこれを見て欲しい、という作品が中心になります。ですから、特撮の展示であると同時に〝庵野秀明ワールド〞の展示でもあり、ファンにとってはたまらないものになりそうです。

 そして、この企画展のために、新たに特撮短編映画「巨神兵東京に現わる」が製作されます。あの巨神兵を、ミニチュアや特殊造型を駆使した伝統的な技法で実写映像化。企画: 庵野秀明、巨神兵: 宮崎駿、監督: 樋口真嗣、そして製作はスタジオジブリです。

 開催は7月10日(火)から。どうかご期待下さい。