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2005年12月14日

「ゲド戦記」って何?

 僕らが今作っている「ゲド戦記」。この映画には、原作があります。

 ちょっと大きな本屋さんだったら、児童書や、SF・ファンタジーの棚に置いてあると思います。どこかで、タイトルを目にした事がある、という方も多いのではないでしょうか。

 「ゲド戦記」シリーズは、アメリカの作家、アーシュラ・K.ル=グウィンの手による、ファンタジー文学の金字塔です。アースシーという、架空の多島海世界を舞台に、魔法使いゲドの、若き日から壮年期、そして晩年までが描かれた、壮大な物語。

 「ゲド戦記」は、1960年代後半に、第1巻「影との戦い」が出版されました。

 「ゲド戦記」の最大の特徴は、自分の敵は、自分の内にあるという、人間の内面的な葛藤を、ファンタジー世界の中に描き出した事にあります。
 
 大きく言えば、「ゲド戦記」が生まれるまでのSF・ファンタジー作品では、倒すべき敵や、克服すべき差別的環境を、主人公がいかに乗り越えるかが、物語の主軸でした。

 ところが、「影との戦い」には、倒すべき強大な敵は存在しません。

 魔法使いになる事を夢見る少年ゲドは、自らの傲慢さ故に、死の世界から、己の闇の部分である「影」を呼び出し、つけ狙われます。追われている間は、影はどんどん大きくなって、ゲドを苦しめる。しかし少年が、影から逃げるのではなく、向き合うべきだという事を悟ったとき、彼は影に向き直り、抱きしめる事によって、影と合一し、大人への第一歩を踏み出す──これが「影との戦い」のあらすじです。
 
 己の敵は「もう一人の自分」であるという個人の内面的葛藤を、ファンタジー世界の中に描きだした「影との戦い」は、後のSF・ファンタジー作品に大きな影響を与えました。それ以降、小説や映画の主題は、自分自身との戦い、というテーマが、中心となっていったのです。

 以降「ゲド戦記」シリーズは、魔法使いとしての絶頂をむかえ、やがて晩年に向かってその力を失ってゆくゲドの生き様を通して、現代社会が抱える様々な問題を鋭敏に映し出し、その向かうべき道を描き出してゆきます。

 では僕らが作っている「ゲド戦記」は、どういう映画なのか?

 それはまだ、言えません(笑)

 公開までまだ、時間がありますからね。
 徐々に、この「制作日誌」と、おとなりの「監督日誌」で明かされてゆくことになるでしょう。

 「ゲド戦記」は、外伝も含めると全部で6巻。

 毎日の通勤、通学の途中や、寝床のお供に読んで、1ヶ月に1冊読んでも半年。読み応えたっぷりです。
 
 ぜひ、来年の夏までに、読んでみて下さい。
 きっと映画の世界を、より深く楽しめると思います。

 これから年末にかけて、布団にくるまって、精神を飛翔させるにはぴったりの作品ですよ。