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「ゲド戦記」制作日誌

2006年1月 3日

監督の色彩講座

 三箇日、最後の今日。
 東京・東小金井は、低い雲をまばらに抱いた晴天でした。


 今日は、監督以下、作画監督の山下さん、稲村さん、美術監督の武重さん他が出社。監督は、鈴木プロデューサーから与えられた「宿題」に四苦八苦中。

 その宿題が何なのかは、いずれ監督日誌で明かされる……かもしれません(笑)
 

 今日は午後から、正月休み返上で武重さんがチェックした背景の、監督チェック作業を行いました。

 去る12月19日(月)の日誌で、「ジブリ映画の色の秘密」と題して、映画の色の配色の仕方について書きましたが、多方面からご好評を頂きました。今日も、興味深い話が聞けましたので、書いてみたいと思います。

 例によって、素人の僕が書きますので、ご容赦の程を。

 きっかけは、映画に登場する船の側面についている装飾の色をどうするか、という話題の時。監督の口から「補色」という言葉が出てきたのです。


 皆さん、補色ってご存じですか?


 補色とは、反対色とも言いますが、「赤と緑」「オレンジと青」「黄色と紫」といった、色彩的に反対になる色の事で、絵の具で混ぜると、お互いの色を打ち消してしまいます。

 ところが、この両者の色を並べて配置すると、互いに引き立てあって、「上品だけど派手な色になる(監督談)」のだそうです。

 木目の船に赤い色の装飾がついているが、もうちょっとそれを浮き立たせたい。そんなときには、赤の補色にあたる緑系の色を近くに配置する。そうする事によって、画面に配置された色が、人間の目にはより鮮やかにクッキリと見えてくる、と監督と武重さんは、ひとしきり色の配置について議論していました。
 
 ちなみに、秋の紅葉が人間の目に美しく見えるのは、木々の緑と、葉の赤という補色同士が、互いに引き立て合うからなのだそうです。


 自然とは、不思議なモノですね。
 その自然を表現しなければならないアニメーションの美術もまた、自然の法則にならって描かれています。

 またひとつ、勉強になったお正月でした。