「野中くん発 ジブリだより」 7月号

 スタジオジブリ最新作・米林宏昌監督第2作「思い出のマーニー」ですが、6月25日(水)に初号試写を終え、ついに完成しました。思えばちょうど一年前の夏には「風立ちぬ」の公開があり、その後に宮崎駿監督の引退宣言、そして11月には高畑勲監督14年ぶりの新作「かぐや姫の物語」公開と、この一年、大きな出来事が続きました。そしてこの夏は「思い出のマーニー」。一年の内に3本の劇場作品公開というのはジブリ史上初ですが、両監督の大作2本の後、一転して、今度は若手監督の清新な作品の登場となります。

 改めて述べますと、原作はイギリスの同名児童向けファンタジーで、大変評価の高い作品です。米林監督の第一作「借りぐらしのアリエッティ」もそうでしたが、映画では、イギリスだった舞台を日本に置き換えています。ただ、「アリエッティ」のときは日本のどこかまでは設定しませんでしたが、本作では北海道としました。それゆえ、スタッフは制作開始前に北海道にロケハンに行き、釧路、根室、厚岸などを取材しています。主人公は12歳の少女、杏奈。そして本作にはもう一人の少女、タイトルロールのマーニーも登場します。Wヒロインもジブリでは初でしょう。この映画は、自分を見失い、心を閉ざしてしまった少女・杏奈が、療養先で不思議な金髪の少女マーニーと出会い、心を通わせるうちに、自分を取り戻し、感動の真実にたどりつく物語です。マーニーとは誰なのか。北海道の自然と周囲の人に囲まれながら、思いがけず謎が解けるとき、杏奈は"まるごとの愛"に包まれていることを知ります。米林監督は企画意図にこう書きました。「もう一度、子どものためのスタジオジブリ作品を作りたい。この映画を観に来てくれる『杏奈』や『マーニー』の横に座り、そっと寄りそうような映画を、僕は作りたいと思っています」。公開は7月19日(土)。子どもだけでなく、今、自分を見失いがちなすべての人々に、この映画は届くことでしょう。

 さて、「マーニー」公開と連動して2つの展覧会が開催されます。「思い出のマーニー×種田陽平展」(江戸東京博物館、7月27日(日)より)は、本作の美術監督で、元々実写映画の美術の第一人者である種田陽平さんが「マーニー」の世界を巨大空間アートで表現します。「ジブリの立体建造物展」(江戸東京たてもの園、7月10日(木)より)は、ジブリ作品に登場する様々な建物の魅力を多面的に紹介。どうぞ宜しく。