2006年 9月

9月1日(金)
今日から、ベネチア映画祭出席のため、鈴木Pと吾朗監督がしばらく不在。制作部門がまだ夏休みということもあって、ジブリは火が消えたように静か。おまけに急に涼しくなったせいか、なんとなーく、さびしい気持ちになる。ただ、広報部では、早くも今年の忘年会の話で、盛り上がっていたのだが。


9月2日(土)
今日も人が少ない。夜七時に、社を出たところ、タイムカードは最後の一人だった。これで社には警備さんしかいないことに。こんな日は、スタジオジブリ始まって以来なのではないかと思われる秋の珍事であった。


9月4日(月)
作画・美術・仕上・撮影・CGなどの制作部門の夏休みが明け、みんな久々に顔を合わせる。今年はいつもより長い夏休みだったので、それぞれ出来事を報告しあう風景が各所で見られる。さて、この夏休み中に起こった大きな変化は、1スタのトイレ。和式トイレが撤去され全て洋式になり、さらに内装にカラフルな色が塗られ、とってもラブリーな雰囲気に。これで毎日快便間違いなし!?
060904.jpg「なぜかドアだけカラフル」


9月5日(火)
現在制作している○○○の絵コンテAパートが完成。282カット、約21分。ちなみに「千尋」や「ハウル」の絵コンテが最終パートまで完成したのは、公開半年前。今回はいつになることやら・・・。完成までの道のりは遠い。


9月6日(水)
ポスプロの稲城さんと津司さんが、某プロジェクトのレコーディングのためにスペインに旅立つ。その途中、英国ヒースロー空港でのトランジットのときに両名の荷物が見事、行方不明に。結局、体ひとつでスペインに入ることになり、現地で着替え等を買う羽目に。まだ、荷物は見つかってないそうだが、果たして無事見つかるのでしょうか?

ところで、東京新宿では、早くも来年のアニメフェアのキックオフが行なわれる。いつもいっしょにブース展開している、日テレさん、プロダクションI.G.さんと、施工を担当しているムービックPSさんとの顔合わせ。喫茶店の飲み物がかなり高くて、カレーセット飲み物付きと300円しか違わないので、ほとんどのメンバーがカレーセットを頼む。まだ、11時過ぎだというのに。微妙な庶民感覚の持ち主の集まりである。


9月7日(木)
作画部のフロアに置いてある薬箱を久々に点検してみると、ほとんどが期限切れ。ひどいものになると1998年に期限が切れているものも見つかり、一同唖然。それにしても、今まで誰も使わなかったのか?それだけみんな健康ということかなぁ?!

ところで、今夜は満月。東京でも夕方少し満月が雲の合間から顔をのぞかせる。ただし、今年の仲秋の名月はいつもより遅めで一ヵ月後の10月6日らしい。某ファーストフードチェーンの「月見バーガー」を食べながら、今年も時期が微妙だなぁとわりとどうでも良いことを考えながら帰宅の徒につくのであった。


9月8日(金)
作画・制作フロアと映像部フロア用に掃除機を購入。どちらも業務用の少し大きめのクリーナー。これまで家庭用の掃除機を使用していたのだが、耐久性やゴミを溜める容量の大きさを優先し、今回、業務用を選択することに。市販されている家庭用掃除機と違って、限りなくシンプルなのだが、このシンプルさが長持ちの秘訣なのかも。さあ、がんばって掃除しましょう、使わないと違いもわかりませんから・・・。
060908.jpg「昔、学校で見た!?」


9月9日(土)
本日は事務系はお休み。ただ、ベネチア映画祭の発表があるため、何があるかわからないので念のために夜は出社。ただ、国内ではあまり盛り上がってないためか、情報が少なく、ネットの書き込みもほとんどない。結局、全てが判明したのは明け方近く。長い時間いたわりには問い合わせの電話は2件ほどだった。このベネチア映画祭の様子は、第2日テレ報道部で動画配信中です。是非、ご覧下さい


9月11日(月)
早朝から、ものすごい雷と豪雨。ジブリ美術館では「学校へ行こう」(9.19OA)の撮影が行なわれたのに。やはり、「吾朗監督=雨男」説は健在か。ただ、撮影の頃にはすっかり青空が広がってきて、「絶対違う」と本人は否定し続けていた。
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「本当に晴れた!」

また、スペインに出張中だったポスプロ稲城氏が帰国し久々に出社。例の紛失したスーツケースは帰国時に見つかったとのこと。同行したツッシーのスーツケースはいまだに見つかっていない・・・。いずれにしても、二人とも体はいたって健康そうなので何よりだった。「荷物がなくても案外旅行ってできるもの。かえって気楽でいい」といってるツッシーの話を聞いていると、なんだか電波少年で拉致されて海外に連れて行かれた若手お笑い芸人の姿がダブって見えてくるのだった。


9月12日(火)
月刊Invitationの取材で、編集の浅岡氏とライターのトモエちゃんが鈴木さんを訪ねる。ベネチアの話を聞くためだったのだが、鈴木さんの話は、イタリア女性の胸の話ばかり。向こうの女性がいかに自由で開放的かということに感心したかという話なのだが、オッパイとオナカとオシリが丸出しという話を困ったように聞いていた(まもなく結婚する)トモエちゃんは、一体どんなふうにまとめてくれることだろう。(10.10発売の月刊Invitationをお楽しみに)


9月13日(水)
制作進行に欠かせないのが、なんといっても車。原画、動画などを回収するときには、昼夜問わず大活躍。雨の日も晴れの日も、もちろん季節も関係ない。当然、雪の日も回収があるわけで、ここ東京でも、年に一、二回ほど雪が降り積もることがあり、そんなときのために、ジブリでも当然スタッドレスタイヤを用意している。普段は使用しないものなので駐車場の奥に置き去りにしていたが、少しきれいに収納しようと思い、タイヤ置きを新たに購入。その名も「おきたろう」。これが、なかなかの優れもの。最近、飲酒運転や事故の話題が耐えないが、たった一回の事故で全てが台無しになるのです。念には念を入れすぎても無駄にならないのが車の運転。みなさんも気をつけて、安全運転を心がけましょう。
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「これがうわさの優れもの」


この日、吾朗監督や、鈴木プロデューサーと中島館長など、ジブリのいろいろな人が東京都現代美術館で開催中の「ディズニー・アート展」を見に行く。平日の雨の日なのに、たくさんのお客さんが来ていて大盛況。「毎年夏にはディズニー展をやったらいい」と思ったのは、鈴木プロデューサーだけではないはず。そんな「ディズニー・アート展」は9月24日までです
(22日と23日は午後8時まで。24日は7時まで、閉館時間が延長になります。仕事が終わった後からでもゆっくりご覧になれます。)


9月14日(木)
高畑監督のお客さんがやってきて、1スタ・バーにてしばし打ち合わせ。NHK出版の方と眼光鋭い男性が同席。名刺を見て「あっ」と思う。さいふうめい氏であった。本名は全く違った名前だったので、いらっしゃるまでまったく気付かなかった広報N氏。「哲也」とか「シンクロウ」ずっーと読んでいます。結局、仕事が成立しなかったのが、ちょっと残念だった。


9月15日(金)
現在、スタジオは次回作の準備に入っているのだが、殆どのスタッフは外のスタジオから仕事を頂いて作業をしている。そんなわけで、この時期は、いくつかのスタジオの進行さんもカットの回収のために頻繁にジブリに顔を出す。今日は、「ゲド戦記」の追い込みのときにバイトで働いていてくれた”クロミちゃん”ではない橋本綾ちゃんが、某スタジオの制作進行として元気に回収に来てくれた。このような再会もうれしいもの。いつも元気を忘れることなく、制作進行の仕事を全うしてください。応援してます、みんな。


9月16日(土)
今日は防災訓練が行われた。制作の新人・慎太郎の“火事だー!”の一声から始まり、消化訓練までつつがなく進む。本日、説明をしてくれた消防士さんの説明の中で、体で覚えてしまえば、どんなにパニックになっても体は勝手に動いてくれる、というフレーズがあったのだが、確かにそのとおりで、緊急災害時のときは頭などまったく役に立たないような気がする。会社の防災訓練は一年に一度しかありませんが、日ごろから必ず体を使って意識する、覚える訓練をしておくことが大切だと改めて思ったのだった。
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「なれない消火器、空へ向けて噴射!」

だが、防災訓練の真の楽しみといえば、”炊き出し”に尽きる。本日のメニューは、最近流行の北海道発”白カレー”。一見クリームシチューのようで、食べるとちゃんとカレーの味がする不思議な食べ物。CG部の駿くんをはじめとした若手が朝からかまどで炊いたご飯のおこげも絶品で、その全てがあっという間にスタッフのお腹に消えてゆくのだった。ここジブリは小金井にあるのだが、三鷹の事務所からもお昼前には"わざわざ"はせ参じたのがイベント事業室の田中氏と筒井氏。防災訓練とは関係ない二人もパクパクとカレーに舌鼓を打っていた様子。

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「かまどで作りました!」

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「草屋から食べに来ました!!」


9月19日(火)
スタジオは、そろそろ本格的に次回作○○○の制作に入っている。もちろん、まだカットは上がって来ないが、これから上がってくるであろうカットを保管する場所を確保しておくために、「ゲド戦記」の背景カットをダンボール箱に詰める作業を行う。作業を終えた後の空になった棚を見ながら、早くこの棚がいっぱいにならないかなぁと、しみじみ思うのであった。


9月20日(水)
制作部のフロアには扉が付いているのだが、普段、カットなどを持ち歩くために扉を開けっ放しにしている。その扉のストッパーとして、ゴム製の扉に下に挟み込むタイプのものを使っていたのだが、床が滑りやすい材質でできているのなかなか上手く止まってくれない。更にゴムの磨耗も加わり、全く役に立たなくなったので、ストッパーを新たにつけることに。制作の若手、慎太郎に、一番止まりやすいストッパーを買ってくるように依頼し、新しいタイプのストッパーを入手したのだが、なんと、これもまた上手く止まらない。原因は扉が重すぎるらしい。どなたか、しっくりくるストッパーはご存知ないでしょうか?


9月21日(木)
○○○の作画インを10月に控え、各スタッフに渡す絵コンテのコピー作業を行う。社内スタッフだけとはいえかなりの量になり、コピー機をフル回転させた後は、更に手作業で紙の束をきれいに揃え、ホチキスで留める。大変な作業ではないのだが、手間と時間のかかる作業。でも、この作業をしていると、いよいよ制作が始まるぞという気分が高揚してくるわけで・・・。それが例え、泥沼の道とわかっていても・・・。嗚呼、やはり一種の職業病なのでしょう、制作部のスタッフは。
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「ウシコも、のんびり待ってます」


9月22日(金)
1スタの3階(PD室)に行くと、壁に衝撃の張り紙が!ナヨ、短い間だったけれどいろいろお世話になりました。いつまでも、お元気で!?
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「たぶん、鈴木さんの悪戯?でも、立派なパワーハラスメントですね」


9月25日(月)
ジブリでは毎年11月に、ジブリ美術館と合同で社員旅行が開催される。今日は第一回目の打ち合わせ。とはいえジブリの社員旅行は、「紅葉狩りとグルメと温泉の2泊3日の旅」みたいな団体行動の趣向を凝らしたものではなく、とりあえず約250人の団体で現地に向かうだけである。全員で観光したり、全員参加の宴会なども原則的にはない。結果、団体行動は、往復の移動と夕飯だけということになり、それ以外は完全なる自由行動、全ては個人の裁量次第というわけだ。ガイド本片手に名所旧跡めぐりに情熱を燃やす人もいれば、テーマパークで思いっきり遊ぶ人、はたまたグルメ三昧、または温泉でのんびりする人、中には実家に帰省したりする人までいて、過ごし方は本当に様々。各々が意思を持って旅をする。そして、その意思を共有できる人を見つけて旅の道連れにする。その結果、道連れが、生涯のパートナーになってしまった前例もあるので、その選定はよく考えて。


9月26日(火)
現在、○○○の準備で宮崎監督以下メインスタッフが準備を始めている。今回、いつもと違うのは、監督が描いている絵コンテがカラー!つまり水彩で色をつけて描かれている点である。そのため通常はモノクロコピーの絵コンテを各スタッフに配布しているのだが、特別版としてカラーコピーの絵コンテも作り、メインスタッフ中心に配布中。色つきの絵コンテというのは余り見たことはなく、もちろんジブリ作品でも初めてで、とても新鮮なのだが、この色つきの絵コンテ、この先何パートまで続くのだろう?

この日の朝の報道で、丹波哲郎さんがお亡くなりになっことを知る。丹波さんといえば、「猫の恩返し」の猫王の怪演が思い出される。アフレコの際、スタジオにいらした丹波さんは、格好良くて、気さくで、とても面白い方だった。丹波さんのご冥福を心よりお祈りいたします。


9月27日(水)
この日の朝、出社すると会社の前に観光バスが2台とまっている。海外から団体の見学者がいきなりやってきたのでは、とドキドキした広報部員だったのだが、聞けば、お隣さんのガイナックスの打ち上げ旅行のバスであることが判明し、ホッと胸をなで下ろす。どうも「立山黒部アルペンルート」方面に出かけるらしく、ちょっとばかし羨ましい気分なのであった。

午後は、○○○のAパート分の処理打ち合わせが行われる。とは言うものの、具体的な打ち合わせには至らず、映画の作り方に関する方針を確認しあうだけとなる。つまり、具体的な処理はカットごとに確認していかないとわからないということらしい。それだけアニメーションの表現に於いて野心的な作品になるということらしく、この手探りの状態は制作にとってはとっても不安なもの...。この表現の方針がどうなるかによって、全体の作業の大変さの度合いが変わってくるからなのだ。それが、いつものことながら今回も相当深刻。楽にできるものなんてないのはわかっているのだが。


9月28日(木)
ジブリの中2階にある会議室は、主に会議や打ち合わせ等に使用されているのだが、その壁一面には本棚があり、日頃資料等で購入したものや出版社などから送られてきた本でぎゅうぎゅうになっている。年に何度か整理しても、すぐにいっぱいになることの繰り返し。今日も、宮崎監督が読まなくなった本は知り合いに寄贈すると言い出し、整理を始めることに。主に小説が多いのだが、100冊近くが処分の対象に。本にとっては、本棚の肥やしになるより読んでくれる人の所にいくほうが幸せなわけで、本棚も”とりあえず”すっきり整理されました。

ところで、最近、鈴木さんの体調が思わしくないらしい。持病の腰痛が悪化して、昨日はついにぎっくり腰に。整体の先生に2時間もマッサージしてもらって、なんとか出社しているのだが、とても辛そう。おまけにここにきて、ついに老眼鏡を作ることに。「60歳まではがんばろうと思ったけど」と笑う鈴木さんももう58歳。だんだん無理が利かなくなってきたようで、しばらく無理は控えてください。(われわれのためにも by 宣伝スタッフ)


9月29日(金)
来週の作画インを控え、今日はメンスタッフのスペース拡張のためのレイアウトの変更。現状、メインのスペースが広くなりかなり快適な場所になったのだが、今後、スタッフが増えていくことが予想されるので、つかの間のスペースともいえる。まあ、当たり前といえば当たり前なのだが、とりあえずは気分をリフレッシュ。

最近、ゆとりが出た一部事務系スタッフの間では、どうもこの機に映画を楽しむ人が増えているよう。広報部まわりでは、「グエムル」を誘い合って見に行く人たちや、「トンマッコル」の試写に出かけるもの。先日は、来年公開の3DCGアニメーションの社内試写も行なわれる。そんな中、ある広報部員は、「ゲド戦記」をDLPで観に行ったりもしている。久々に観る「ゲド戦記」はDLP上映では目を見張るように美しく、やっぱり傑作だし大好きな映画だと再確認するのであった。


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「9月もおわりだニャー。by 屋上で夕日をながめるウシコ」